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家具が主役の空間編
Y.Y.様邸 第5回
夢はアンティークのある暮らし
家具から始める、憧れの空間づくり
「アンティークの家具や小物に囲まれて暮らしたい」。家具から空間をデザインするという通常とは逆の流れで、憧れの住まいを形になさったY様ご夫婦。今回は、長年の構想をどのように具体化していったのか、そのプロセスを伺いました。
アンティーク家具のある家に憧れて…
奥様:以前は1階のリビングにソファとグランドピアノ、エレクトーンを置いていて、キッチン横の小さなスペースをダイニングに充てていました。ダイニングがとにかく狭くて、奥に座った人が席を外すときは、手前に座っている人が立ち上がらないと出られないほどだったのです。
それは不便でしたね。
奥様:それに加えて子どもたちが巣立ったために、2階の子ども部屋が使われないままになっていました。平均寿命から逆算すると、私たち夫婦はあと30年はこの家で生活するわけです。それなら、思い切って自分たちが住みやすい空間に変えようと決めました。
ダイニングテーブルは、以前も同じ物を使っていたのですか?とても趣がありますね。
奥様:購入したのは随分前で、これがアンティーク家具との最初の出会いでした。その後、布を染めて花を創作する「染め花」の教室に通うようになって、その先生のお宅がアンティーク家具に囲まれた最高に素敵な空間だったのです。もう心から憧れてしまって、「いつかは私も…」とずっと胸に秘めていました。そこで今回のリフォームをきっかけに、家具や小物をアンティークで統一することにしたのです。
「家具」から「空間」へ。通常とは逆プロセスで設計
ここにいると、奥様が本当に好きな家具だけを厳選していて、一つひとつの物が大切に扱われていることが伝わってきます。最初に工務店さんには、アンティーク家具が似合う空間にしたいと伝えたのですか?
奥様:はい、その希望を伝えるとともに、リフォームでかなえたい項目を書いてお渡ししました。工務店さんは、女性ならではの細やかな目線で、こちらの思いを上手に汲み取ってくださって。行きつけのアンティークショップにもお連れして、「このランプはダイニングテーブルの上に」というふうに話し合いを重ねていきました。
一般的には大きなところから小さなところへ、つまり間取りを決めた後に家具の配置を考えるという流れで設計を詰めていきます。けれど、今回のリフォームはその逆のプロセスで、家具や小物を起点に発想を広げていかれました。こんなに居心地の良い空間に仕上がったのは、工務店さんと丁寧に意識をすり合わせていった結果だと思います。
奥様:本当にその通りです。どこをとっても、「イメージと違ったな」と感じるところがない空間になりました。むしろすべてが想像を超える仕上がりで、これ以上ないほど気に入っています。
ワンポイントアドバイス
希望を書き出して、工務店さんと感覚を共有しよう
最初にY様は「2階にウォークインクローゼットを作りたい」、「大勢でテーブルを囲める広々としたダイニングが欲しい」というように、リフォームで実現したいことを書き出して工務店さんに渡されました。希望を書き出す作業はこれまでの暮らしを振り返り、リフォームで実現したいことを明らかにする最初の一歩です。工務店さんとイメージを共有することで感覚のすり合わせができますので、施工後の仕上がりでの相違も少なくなりますよ。
セレクトショップのよう。おしゃれなクローゼットが完成
奥様:工務店さんと話し合いを進める中で、2階の子ども部屋の使い道は大きなテーマでした。当初は娘・息子家族の客間として使おうかと思っていましたが、年に数回の訪問のために1部屋空けておくのはもったいない。だったら「自分たちの好きなように活用しよう」と、私専用のウォークインクローゼットにしたのです。
すごいと思ったのは、以前あった部屋のドアを窓に変える一方、寝室から直接クローゼットに出入りできるよう、寝室との間にドアを作っていますよね。これによりプライベート感がアップしています。
奥様:そうなのです。私からは「セレクトショップにいるようなワクワクする空間にしたい」とお願いしました。そして、ここは文字通り私の「お城」になるのですから、細部までとことんこだわりました。例えば、ドアのノブや棚のフックは、私が雑貨屋さんで見つけてきた物なのですよ。
奥様のときめきがギュッと詰め込まれた空間なのですね!クローゼットって「ここは見えない場所だから」と雑に扱われがちなのですが、そのようなスペースにこそ気を配り、ひと手間加えてあげることが大切。すると、そこにいるだけで気持ちが贅沢になる、素敵な空間に生まれ変わります。
ワンポイントアドバイス
諦めがちなエリアにも、小さな気配りを
ウォークインクローゼットやダストボックスを置くキッチン脇のパントリーは、無機質になりがちな裏方スペースです。けれど、そこにわずかな手を加えれば、家全体の統一感が増してワクワク感が生まれます。さらに、Y様のようにドアノブや洋服を掛けるフックなど細部のパーツにまでこだわれば、いっそう愛せる空間へと昇華します。「お金をかける」というよりも、「少しだけ気を配る」という発想が大切。ぜひやってみてください。
ディテールの積み重ねで、憧れの住まいが形になる
奥様のときめきポイントは、他にもたくさんありますよね。
奥様:そう、あり過ぎるぐらいです(笑)。例えば、ダイニングを見下ろす2階の窓のフラワーボックスは、工務店さんとアイデアを出し合った力作です。リフォーム前には開けることがなかった窓でしたが、「吹き抜けを生かした空間にしたい」という願いが見事に実現しました。
室内の窓にフラワーボックスをつけるという発想にはびっくりしました。2階の寝室からは「外に向けて」窓を開ける気分になって、ダイニングから窓を見上げると「屋内なのに外にいる」気分を味わうことができます。ファンタジー感が演出されていて新鮮ですね!
奥様:それから、輸入タイルを貼ったキッチン前の壁も、思い入れの深い場所です。工務店さんが一生懸命探してきてくださったタイルの中から、じっくりと相談して選びました。縁の欠けや凹凸した表面が、何とも言えない味わいがありますよね。
通常取り外しのできない構造壁は、目立たない色の壁紙で済ませてしまいがちです。けれど、このタイルでアクセントをつけることで、全体の雰囲気がぐっと良くなりました。あと、私が注目したのはキッチンとパントリーの間にあるアーチ枠。奥様のクローゼットと同様、パントリーは普通なら手をかけない場所です。それが通るたびにときめきを感じるエリアへと変貌したのは、このアーチ枠のおかげですね。
奥様:本当に、キッチンで過ごす時間が驚くほど豊かになりました。
今回実現なさった住まいを一言で表現するなら、「かわいらし過ぎない大人のファンタジー空間」ではないでしょうか。アンティーク家具を主役にしてシックな空間をつくりながら、要所要所に遊び心を利かせることで軽やかな世界観をつくり上げています。そしてその世界は、Y様の柔らかで女性的な雰囲気ともぴったり呼応しています。奥様が愛する物、大切にする世界を工務店さんと共有し、丹念にディテールを積み重ねていった賜物ですね。
ワンポイントアドバイス
好きなものを自覚すれば、リフォームのテーマが見えてくる
Y様のリフォームが成功したのは、「アンティーク家具が映える家」とテーマが明確だったこと。けれど、多くの人は完成イメージが漠然としているものですよね。そこでまずは、自分たちが好きなものに対して、素直になることから始めてみてください。その際、周りに氾濫する情報に惑わされないことが重要。自分たちはどのようなテイストやカラーに惹かれるのか、どのような空間に身を置くと心地いいのかを問いかけていけば、次第に「自分たちらしさ」が見えてきます。
プロフィール
Y様(愛知県)
昨年、築30年になる愛知県春日井市のご自宅をリフォーム。フルート演奏、染め花、ガーデニング、アロマハンドトリートメントとさまざまな趣味を楽しむ奥様のたっての希望で、念願の「アンティーク家具が映える家」を実現。
大塚泰子氏(有限会社ノアノア空間工房)
建築家。「どうしたら建築が豊かさを育てるのか」をテーマに、これまでに約80軒の住宅設計、約20店の店舗設計を手がける。近著に『小さな家のつくり方 ~女性建築家が考えた66の空間アイデア~』(草思社)。
リフォーム情報
家族構成 | 夫+妻 | 面積 | 110m²⇒110m² | 形態 | 戸建住宅 | 日数 | 70日 |
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築年数 | 30年 | 費用 | 1,180万円
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採用商品 | TOTO:トイレ「レストパルL型」/浴室「サザナ」/洗面台「オクターブ」 YKK AP:窓「プラマードU」 DAIKEN:床材「Myフロア」 「ハピアフロア」 |
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担当店 |
株式会社リビング春日井
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