(写真/すべてグローバルベイス)
長引くコロナ禍で、家で過ごす時間が長くなっている今、家族が暮らす空間に注目が集まっています。
中でも、子どもがのびのびと遊びや勉強に取り組める空間づくり、
成長を見越した間取りなどはどのように考えればいいのでしょうか?
都市部を中心に、リフォーム向きの物件探しからフルリノベーションまでをワンストップで行う
グローバルベイス株式会社の田村 歩さんにお話を伺いました。
プロフィール
グローバルベイス株式会社
不動産事業部/課長代理
田村 歩(たむら あゆみ)
https://www.globalbase.jp/myreno/
家族に近い、リビングダイニング内の
子どもスペースが人気上昇中!
かつて家づくりでは、子どもの人数分の部屋を確保することが重視されていました。近年は一転、家族のコミュニケーションを第一に、リビングダイニングに子どもスペースを設ける傾向が目立つようになりました。
小学生以下の子どもスペースは両親のそばが理想。
在宅ワークスペースとの共用も
「リビングダイニングの一角に子どもの遊ぶスペースや勉強スペースを設けたい、という方は増えています。家事をしながら子どもの様子を見たり、家族とのコミュニケーションを重視する、といったお考えですね」(田村さん。以下、セリフはすべて田村さんの発言)
キッチンをオープンスタイルにして、対面キッチンやアイランドキッチンを配すれば、両親が料理をしながらも、リビングダイニングにいる子どもたちと気軽に会話することができます。家族が同じ空間で過ごすことが日常になると、コミュニケーションや、家族の絆も自然と深まっていきそうです。
一方、寝室はあくまで寝るための場所と割り切り、ベッドが入る程度の広さに。こうすると、家族は自然と、日中の大半をリビングダイニングで過ごすようになるといいます。
新型コロナ感染症対策の影響で、親が在宅ワークをしている家庭も少なくありません。リフォームの際にリビングダイニングの一角にカウンターテーブルをつくり付け、パソコン用のコンセントなどを設けておくと、日中は親が仕事場として、夕方以降は子どもが勉強の場として使えます。
「カウンターテーブルを長めにして、親子が並んで仕事や勉強できるようにするのもいいですね。そのほか、リビングダイニングを壁で仕切って勉強兼仕事スペースを確保するケースも。この場合、壁にガラス窓を設けると、視線が外部に抜けてスペースを広々と感じられたり、自然光が入りやすい、換気しやすいといった利点もあります」
勉強しやすさにも留意してプランを検討しているという田村さん。子どもが集中できるように、窓付近や、テレビが視界に入らない位置を提案しています。
「リビングダイニング内に勉強スペースをつくったお客様の中から、お子さんはわからないことがあるとすぐ親に聞けて、親がわかる範囲内であればその場で教えられるので、勉強の効率がよくなったという声がありました。また、親にすぐ質問する習慣がついたためか、学校でも自分から積極的に人に聞いたり、意見を言えるようになった、という声も」
子どものスペースのあり方は、家族のコミュニケーションのみならず、学びにも影響があるのかもしれません。
家族の変化を見越して、
子ども部屋などの広さと配置を検討
子どもの年齢によって、子ども部屋に対する考え方も異なってくるといいます。特に、中学生以上になると勉強に集中でき、プライバシーを守れる個室の要望が高まります。
「当社のお客様には、お子さんが小さいうちは比較的コンパクトな物件を購入して、リビングダイニングなどに子どもスペースを設けて、その後、成長したら個室を確保できるような広さの物件に買い替えをご検討されるケースが多いですね」
昨今の個室の子ども部屋は、約4畳が多く、勉強机、ベッド、衣類などの収納スペースが基本の要素。自室でパソコンやスマートフォンを使う機会が増えたことから、コンセントの数は要検討です。野球やサッカーなど部活で使うような大型の道具を部屋に入れると邪魔になりがちなため、田村さんは玄関の土間を広く取り、置き場所を確保する提案をしています。
「母親から、泥のついた道具類を部屋に入れたくない、と希望されることもありますね(笑)」
子どもに関連する要望として、兄妹や姉弟など、年ごろの異性のきょうだいがいる場合、洗面台を複数つくりたいという話が出るといいます。
「一般的に、洗面台は浴室の隣の洗面所に1つ。年ごろのお子さんは、自分が使うときに洗面所に鍵をかけてしまうこともあるようです。他の家族が困るので、そういったご家庭ではもうひとつ他の場所に洗面台を設けるといいですね」
また、子ども部屋は、子どもの独立後や夫婦の介護まで視野に入れて計画することも大切です。子どもの独立後、隣り合う2つの子ども部屋の壁を解体し、広々とした夫婦の主寝室に変更したい、一方で、広いリビングダイニングは2部屋に間仕切り、片方を夫婦いずれかの寝室や趣味室にしたいというご要望も。
「後に部屋を2つに間仕切る場合、リフォームの際に壁にあらかじめ下地を入れておくといいでしょう。工事しやすく、工事費を抑えられます」
また、部屋を仕切る際には、ガラスをはめ込んだ引き戸やドア、室内窓を用いるという手もあります。ガラス窓から視線が抜けるので、個々の部屋に開放感が生まれ、より居心地いい空間をつくれます。
快適な子ども部屋を目指し、
内装の「素材感」や「防音」にも配慮を
子どもが長く過ごす空間をより快適に仕上げるためには、手や足が直接触れる箇所の質感や、防音にも配慮しておきたいところです。
たとえば床材は、木本来の質感が美しく、足に触れた時の感触もいい無垢材のフローリング材の人気が高まっているといいます。ただし、傷がつきやすかったり、気温や湿度によって歪みが生じる、定期的なワックスがけが必要などの点が気になり、二の足を踏む人も少なくありません。
「お手入れの手間に悩む方には、無垢材に限りなく近い質感を実現した化粧床材の『トリニティ』や、『フォレスナチュラルⅡ』(いずれもDAIKEN)のように表面に天然木薄単板を使用したフローリング材をおすすめしています。通常の無垢材よりも安価で、手入れもらくです」
在宅時間が長くなってから、外から聞こえる騒音などが気になるようになり、リフォームの際に窓まわりに防音対策を講じる方も増えてきました。
「室内側に『内窓』を取り付ける、二重窓をご希望される方は多いですね。既存の窓枠を取り外さずに新しい窓枠を設置する『カバー工法』もあります。これで、遮音性はもちろん、断熱性を高めることができますよ。ただし、マンションの場合、カバー工法はマンションの管理組合への届け出が必要で、管理規約によっては施工できない場合もあります。事前に確認しておきましょう」
子ども部屋は年代別、人数別に、
場所と機能を検討すべし!
ここからは、年代別のリフォーム・プラン4事例をご紹介。さまざまな背景をもつ4家族がどのようなリフォームを行い、子どもスペースや子ども部屋を実現したか見ていきましょう。そこにはさまざまなヒントがたくさん詰まっています。
ケーススタディ1
家事中も目の届く小上がりを子どもスペースに。
下にはたっぷりの収納も
幼稚園の子どもが2人いる共働きご夫婦の事例です。ご夫婦は次男を授かったのを機に、もう少々広い部屋に住み替えたいと、家探しを始めました。
リフォームにあたってリクエストしたのは、「キッチンに立っていても子どもたちに目が届くリビング」。そこで、隣接する和室を合わせてリビングダイニングキッチン(以下、LDK)を広くし、一部に子どもスペースとして小上がりを設置。小上がりがよく見える場所に新たにアイランドキッチンを設けました。
「床より高い小上がりの方が、キッチンからお子さんたちの姿がよく見えます。(転んだときなどの)安全を配慮してカーペット敷きにしました。小上がりの下は収納に活用しています」(田村さん)
玄関横にはベビーカーなどを収納できる、大型のシューズクローゼットを設けました。また、キッチンから隣室の脱衣室、リビングダイニングまでウォークスルーにして回遊性を持たせたので、家事動線がスムーズです。
「お子さんが小さく、共働きなので、効率の良い収納と家事動線を計画しました。この物件は幼いお子さんたちが快適に過ごせることを第一に選んだもの。将来的に、個室の子ども部屋を確保できる広い家への買い替えを想定しているそうです」(田村さん)
工事費:1,200万円
間取り:2LDK+ウォークインクローゼット+シューズクローゼット
専有面積:75.00m²
家族構成:ファミリー
築年月:1961年10月
ケーススタディ2
大型アイランドキッチンを子どもの勉強スペースに。
遊び場や収納は3人一緒
7歳の長女、4歳の長男、2歳の次女の3人の子どもを持つご夫婦が選んだのは、123㎡という広さのマンション。間取りは大きく変更せず、家族の憩いの場となるLDKを中心に手を入れました。
「リビングダイニングを見渡せるアイランドキッチンにカウンターテーブルを備え付けました。このカウンターでは朝食を食べたり、両親に見守られながらお子さんが勉強をしたりと、家族のコミュニケーションの中心になっています」(田村さん)
現在は子どもたちひとりひとりに個室は用意しておらず、主寝室で家族5人一緒に就寝しています。
「ただし、お子さんの成長を見越して、後にLDKを間仕切り、個室を増やせるように設計しています」(田村さん)
現在は、子どもたち3人が自由に使える遊び場として、主寝室隣の個室1室を活用。マグネット壁材を施すなど最低限のリフォームを行い、そのほかは可動式の簡易な家具を併用して、おもちゃなどを整理しています。
子ども部屋ならぬ子供用ウォークスルークローゼットは圧巻。3人分の洋服からパジャマまでしまってあり、リビングダイニング側と廊下側双方に入口を設けたので、思い立ったときにすぐ着替えられます。十分な広さがあり、クローゼットの中で母親が子どもたちの着替えを手伝うことも可能です。住まいのちょうど中央部分、通常なら暗く使いにくくなる場所にもかかわらず、リビングダイニングから廊下に抜けられる動線にしたため、明るく、使い勝手も申し分ありません。
工事費:1,800万円
間取り:3LDK+ウォークスルークローゼット
専有面積:123.49m²
築年月:1997年12月
ケーススタディ3
プライベート[個室]とパブリック[LDK]を完全分離。高校生以上の家族のプライバシー重視型リフォーム
長男の高校進学と長女の海外留学を機に、広いマンションに移り、家族の各個室と家族のくつろぐパブリックなLDKを完全に分離したリフォームの事例です。
要望は主に、「家族3人それぞれの個室(寝室、勉強部屋)をつくる」「長女が帰国時に使うゲストルームを設ける」「キッチンをオープンにする」というもの。独立型のキッチンをオープンにしてリビングダイニングと一体化し、家族がくつろぐ広々としたLDKを実現。同時に、LDKの一角に長女用のゲストルームをつくりました。
一方、そのほかの家族3人それぞれの個室を確保するため、約8.6畳と約6.1畳の洋室とクローゼットを、ご夫婦の約4畳の各寝室と長男の約3畳の寝室、約2畳の勉強部屋に仕切り直しました。
約2畳の勉強部屋は背面全面に書棚を造作し、壁面にカウンターテーブルをつくりつけるなど、限られた空間を上手に活用しています。
「狭いと思われるかもしれませんが、(かえって)集中できるとのこと。壁に面したカウンターテーブルには、いすを並べて父親が一緒に仕事することもあるそうです」(田村さん)
工事費:非公開
間取り:4LDK+ 書斎(勉強部屋)
専有面積:93.18m²
築年月:1991年2月
ケーススタディ4
成長後の可変性を重視。
リビング脇に書斎スペース+ベンチ収納
ご夫妻と0歳の子どもの3人家族の事例です。結婚後、もともと夫が暮らしていたマンションで新生活を始めましたが、家族が増えたのを機にリフォームに踏み切りました。3LDKの間取りを全面的に見直して2LDKに変更。リフォーム前は室内に光が行き届かず全体的に暗かったものの、壁を取り払ってLDKを広げることで、明るく開放感のある住まいに生まれ変わりました。
「リビングダイニングと隣の洋室、クローゼットを合わせ、より広い空間をつくりました。さらに、リビングダイニングの一部を仕切るようにして、ご主人様が在宅勤務で仕事に専念できる書斎を設けています。書斎は約2.2畳ですが、大きいガラス窓とドアを設けたので、圧迫感がありません」(田村さん)
リビングダイニングは、一部子どもスペースを兼ねるための工夫があります。それは、壁面いっぱいにつくり付けたベンチと、テレビを掛けた壁の裏に設けた"隠し"収納スペース。ベンチの下はすべて収納で、子どものおもちゃなどが十分に入ります。リビングダイニングで遊んだ後は、すぐ手軽に片付けが可能。座る場所はソファを使わずベンチのみにしたので、ソファ下などの掃除の手間を省けます。一方、"隠し"収納スペースは多様な日用品を集中して片付けられる場として活用しています。これらのおかげで、リビングダイニングは、子どもがのびのび過ごせるすっきりとした空間を保てます。
「書斎は、後に勉強部屋として使うことも想定。お子さんの現在だけでなく、成長を見据えたリフォーム(リノベーション)ですね」(田村さん)
工事費:1,680万円
間取り:2LDK+ウォークインクローゼット+書斎
専有面積:82.29m²
築年月:2005年12月
子どもの成長、家族の変化とともに、柔軟に空間をアレンジ
子どもが小さい頃は、広々としたリビングルームで遊ばせたい。小学生になったら、勉強を見守りつつ、コミュニケーションを大切にしたい。中学生を過ぎたら、プライベートを確保でき、勉強に集中できる空間を提供したい。子どもの成長とともに、子どもに合わせた場所をどう用意すればいいのでしょうか? それは、リフォームのアイデア次第で実現可能です。楽しみながら、柔軟な発想で解決策を探っていきましょう。
TDYのコラボレーションショールームでは、TOTOの水まわり、DAIKENの内装建材、YKK APの窓・玄関ドアなど、子ども部屋や子どもとの暮らしをより快適にする商品をご覧いただけます。 またTOTO、DAIKEN、YKK APがご提案している「十人十家(じゅうにんといえ)」でも、それらの商品を取り入れたさまざまなテーマのリフォーム空間をご覧いただけますので、ぜひご活用ください。
子ども部屋リフォームで注目の
リフォーム商品のご紹介
子どもと一緒のより快適な暮らし、コミュニケーションを育む空間づくりをサポートする商品です。
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TOTO システムキッチン
ザ・クラッソ美しさと使いやすさを追求し、さらに「きれい除菌水」で清潔にこだわりました。
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DAIKEN 特殊加工化粧シート床材
トリニティ表面の質感にこだわり、広幅デザインで立体感のある貼り上がりを実現した、まるで無垢材のような化粧床材。お手入れのしやすさも魅力です。
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DAIKEN 天然木化粧床材
フォレスナチュラルⅡ銘木にこだわった天然木化粧床材。銘木の美しさと天然木の自然な風合いをお楽しみいただけます。木肌の肌触りを実感していただけるマットコート(艶消し)仕上げが特徴です。
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DAIKEN hapia(ハピア)/ 間仕切戸
L型コーナー間仕切部屋の一角へのちょっとした空間づくりに最適なL型コーナー間仕切戸です。急な来客や日々の用途に合わせて間仕切りを使用し、手軽に部屋のレイアウトを変えることができます。
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YKK AP アルミインテリア建材
スクリーンパーティション様々な間取りに対応可能な多彩なバリエーションで、シーンに応じて空間を「仕切る」「つなぐ」間仕切です。
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YKK AP マドリモ
内窓 プラマードU今ある窓に内窓を取付けて二重窓に。窓の断熱性を高め、住まいの暑さ、寒さのお悩みを解消できます。室外からの騒音対策にも効果的です。
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YKK AP マドリモ 断熱窓
マンション用半日の窓リフォームで住まいの暑さ寒さを解決。マンションの「戸別改修」に最適な窓リフォーム商品です。防火窓(国土交通大臣認定防火設備)もご用意しています。
※この記事内容は、2022年9月30日時点での情報です。ご了承ください。
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