(写真/すべてTDY)
TDYが掲げるリモデルのライフスタイル提案「十人十家」の4つのテーマのうち、今回は「毎日を健やかに過ごす」にフォーカスを当てます。性能向上リノベーションに早くから取り組み、多くの実績があるアルティザン建築工房代表の新谷 孝秀さんに、札幌市のモデルハウスにて、健康的に暮らせる住まいにするためのリモデルのポイントをうかがいました。
プロフィール
新谷 孝秀(あらや たかひで)さん
株式会社アルティザン建築工房 代表取締役。住宅会社で設計・現場監理を経て、2011年に独立。住宅の性能向上を目指した戸建てのフルリノベーションに取り組んでいる。既存(中古)住宅+リノベーションで、
家族にフィットした住まいをつくる
「リノベは、リフォームの延長上にあるもの」というのが、新谷さんの考え方です。築年数を経て老朽化した部分をリフォームで手当てしながら、次の世代に受け渡せるように、リノベによってこれからの時代に求められる性能まで引き上げ、間取りはいまのライフスタイルに合わせて変える。そうすることで、また家に新しい価値を加えて寿命を延ばすということを目指しているそうです。
「私はもともと新築を手がける住宅会社で、設計や現場監理をしていました。そのころから、お客様と一緒に一生懸命に建てる家ですから、なるべく長く住んでほしいという思いが根本にあります」と新谷さん。
独立して会社を立ち上げたのは2011年。次の時代を生きる20代から30代の子育て世帯が主な顧客層です。
「ちょうどそのあたりから、"既存住宅を購入してリノベして住む"というスタイルが普及してきました。新築住宅に手が届かない若いお客様でも、既存住宅+リノベならなんとかなる。そんな希望を実現していく仕事にやりがいを感じて、リノベ専門にシフトしたのです」(新谷さん)。
既存住宅+リノベならではの
メリットが大きな魅力に
独立当初は、新築する予算がないために既存住宅+リノベを選ぶ、というお客様が多かったそうですが、近年は、予算に余裕があるものの、新築にはないメリットを求めて依頼するケースが増えてきているそう。
新谷さんが実感している「既存住宅+リノベならではのメリット」には以下のような点が挙げられます。
・コストが安い
近年の資材高騰などから、新築住宅も大幅に値上がりしています。一方、リノベでは既存の基礎や柱、梁といった基本構造はなるべく生かすため、新規に使用する資材・工事は新築ほど多くはありません。「既存のうち残せるものは残して性能を高める」というのが新谷さんの方針。必要以上にコストをかけないようにプランニングして、新築住宅よりも安く、でも性能は高く、という目標を持って家づくりに取り組んでいます。
・好条件の立地が得られる
特に市街地では、駅に近いなど好条件の敷地にはすでに何らかの建物があり、新築可能な更地はなかなか出回りません。「でも、既存住宅なら街中でも郊外でもあります。法規的に建て替えが難しい敷地でも、リノベは可能という場合もあります」(新谷さん)。既存住宅+リノベに目を向ければ、家づくりの選択肢が大きく広がりそうです。
・同予算なら、新築住宅よりも広くなる場合がある
新築住宅が高騰しているときなど、予算内におさめるため、当初の希望よりも床面積を抑えてコストダウンするというケースが見られます。一方、既存住宅なら、同じ予算内でより広い物件を見つけリノベまですることも可能。「物件によっては増築したり、庭のウッドデッキとリビングを連続させて生活空間を外に向かって広げることも。物件とプラン次第でお好みの広さに調整できます」(新谷さん)。
・自分好みのデザイン、空間がつくれる
既存の構造を利用するため、建物の外形は大きく変えることはできませんが、内外装は自分の好みのものを選び変更することができます。「(部屋の増減などだけでなく、)構造によっては2階の個室をなくして吹き抜けをつくることも可能です。建売住宅では得られないような、自分好みの間取りに近づけることができます」(新谷さん)。
リノベを成功させる
設計・施工のポイント
数多くのリノベを手掛けてきた新谷さん。その経験から「成功のポイント」を解説していただきます。設計、施工の視点から具体的なヒントが得られそうです。
Point1
断熱性・耐震性を高めて
安心・安全な環境にする
新谷さんがリノベに取り組むようになってから、ずっと実践しているのが、断熱性と耐震性を高めること。「基本的に、既存の建物は柱や梁だけにして改装するフルリノベを提案しています。せっかく骨組みだけにするのですから、しっかり構造は補強して、断熱材も施工し直します」(新谷さん)。
耐震性については、建築基準法で定められた強度の1.5倍に相当する、耐震等級3を目指して補強します。構造計算を行い、地震や台風の際に各部材にどのくらいの強度が必要かを確かめたうえで、必要な構造金物や耐力壁を加え、この先も長く住み続けられるように仕上げていきます。
断熱性は、断熱等級6以上が標準。柱の間に105mm厚の高性能グラスウールを充てんし、その壁の屋外側に75mm厚の断熱ボードを張って二重に断熱層を設けることで、高い性能をもたらしています。
さらに隙間風を防ぐため、室内側は防湿・気密シート、外側には防風紙を連続させるように貼っていきます。C値(相当隙間面積)1.0C㎡/㎡未満というハイレベルな気密性を持たせることで、外気温の影響を小さくし、効率のいい冷暖房・換気を可能にしています。
以上のような断熱・気密・耐震の仕様に加えて、太陽光発電を搭載し、窓にはトリプルガラスの樹脂サッシを採用。さらに家庭用の4kwエアコン1台で全館空調、冷暖房するシステムを取り入れたリノベ住宅モデルを、新谷さんは「サスティナくん」と名づけ、提案の基本にしています。
「既存住宅であっても地震におびえることなく、1年通して快適な環境で過ごせる住まいはリノベで実現可能です。心身ともに健やかな日々をおくるためには、性能向上リノベが必要です」(新谷さん)。
上が、グラスウールを充てんしただけの一般的な断熱仕様の壁。下が、新谷さんが標準で採用している「サスティナくん」の断熱仕様(高性能グラスウール105mm+硬質ウレタンフォーム断熱ボード75mm)の壁。こちらは北海道の冬の寒さにも耐える性能があります。
Point2
現在の家族にマッチした空間に変える
間取りをプランニングする際に新谷さんが大切にしているのは、現在の家族の暮らしに合わせた空間、間取り、動線に変更するということ。「築20年以上の住宅だと、キッチンが独立していたり、応接間と食堂が分かれていたり、廊下や壁、建具で部屋が細かく仕切られていたりします。今の暮らしとはそぐわない空間が多いので、家族のライフスタイルに合わせて再構成する必要があるのです」(新谷さん)。
新谷さんが気を付けているのは下記のようなポイントです。
・家族の集まる場を広くする
リビングやダイニングキッチンなど家族が集まる場には、吹き抜けを設けたり、掃き出し窓から庭のテラスと連続させたりして、なるべく大きな空間を確保するようにしています。「子育て世帯は家族で過ごす時間を大切にしています。みんなそろってもゆったりくつろげる空間が必要です」(新谷さん)。
・生活動線を反映する
そこに住む家族の暮らし方に応じて、一日の生活動線をプランに落とし込みます。とくに重視するのが、キッチン、洗面・脱衣所、浴室などの水まわりと、ファミリークロゼットなど収納との関係。「家族の年齢や仕事、趣味などで一日の動き方は異なるもの。それぞれの家庭に合わせた動線に変えると、スムーズに家事がこなせるようになります」(新谷さん)。
・家族の要望を取り込む
「バーベキューできるウッドデッキ」、「愛車を眺められるインナーガレージ」、「ペットと遊べるリビング」など、家族の「やりたいこと」を実現させるのも新谷さんのリノベの特徴。「プラスアルファの喜びがあると、人生は充実するもの。せっかく生活を変える機会ですから、楽しく暮らせる"仕掛け"を用意したい」(新谷さん)。
・水まわりを充実させる
キッチン、バスルーム、洗面所などの水まわりは、毎日使用する場所。清潔で快適な使い心地にするために、高品質の商品を提案するようにしています。「とはいえ、お客様の好みもそれぞれ。洗面台などは水栓やボウルなどに至るまでご自分で選んでもらって、愛着が持てるようにしています」(新谷さん)。
Point3
窓の配置を工夫して
明るく風通しのいい空間に
「窓の配置も重要です」と新谷さん。柱の配置をあまり動かさずに済むように気を付けながら、自然光を室内に取り込めるように窓を配置し直します。
「夏は直射日光が入らないように、冬は高度の低い日差しをたっぷり取り込めるようにバランスを取ります。春や秋など、温暖な季節は窓を開けて外の新鮮な風も取り込みたいですよね」(新谷さん)。
室内はなるべく光や風を遮らないように間仕切りを少なくし、開放的な空間にします。リノベによって、のびやかで健康的な環境が整えられています。
「次世代に受け継ぐ」
価値のある中古物件を探す
健やかに暮らせる高性能のリノベ住宅を実現するために知っておきたいのが、既存住宅物件の探し方。新谷さんが語る実践的なヒントは、おおいに参考になるはずです。
1981年以降築の新耐震基準のリノベ向き物件が増加中
新谷さんの場合、家づくりの依頼があると物件探しから相談に乗っています。「あまり高価な物件だとリノベの予算が不足してしまいます。一方、いくら安くても躯体までぼろぼろでは補修だけで費用がかさんでしまうことに...。そのあたりのバランスをとるためにも、既存住宅+リノベを考えている場合は、リノベ事業者と一緒に物件を探すことをお勧めします」。
現在は改修用の建材や施工法が発達してきたため、リノベでできる範囲が広がってきていますが、それでも新谷さんが避けるのは、「床が傾いている建物」だそう。「一時的に傾きを直すことはできますが、たいてい地盤沈下もともなっているので、将来的にまた傾く恐れがあります。また構造も全体的に歪んでいるはずなので、"次世代に受け継ぐ家"としてはふさわしくないかもしれませんね」。
購入前には、お客様に同行し新谷さん自ら建物の内外をチェック。費用対効果などの観点から、プロの判断を伝えます。「1981年に耐震基準が大きく変わりました。築年数はひとつの購入の目安になりますが、最近は81年以降の新耐震基準になってからの既存住宅物件も多くなりました。施工不良でもない限り、状態がよいものがほとんどです。これからさらにリノベ向きの既存住宅が増えてくるはずです」。
心身を健やかに育める環境を生み出す、既存住宅+高性能リノベ。家族が安心して過ごせる住まいを得るための選択肢として、今以上に広く普及していきそうです。
TDYのコラボレーションショールームでは、TOTOの水まわり商品、DAIKENの建材、YKK APのエクステリア商品など、快適な家づくりに活用できる商品をご覧いただけます。
またTOTO、DAIKEN、YKK APがご提案している「十人十家(じゅうにんといえ)」でも、それらの商品を取り入れたさまざまなリフォーム空間をご覧いただけますので、ぜひご活用ください。
毎日を健やかに過ごすため
商品のご紹介
高気密・高断熱で1年中、室内を快適な温度に維持するほか、見た目・手触りの心地よさ、清潔を保つ水まわりなど、健康をサポートするポイントはさまざま。
プランニングの際には下記のような代表的な商品を必ずチェックしておきましょう。
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TOTO 戸建て住宅向けシステムバスルーム
シンラ「上質で心休まる穏やかな時間をすごす」リラックスを追求した先進機能を堪能できるバスルームです。
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TOTO ウォシュレット一体型便器
ネオレストLS高度なクリーン技術と癒やしをもたらすデザイン。これからの暮らしをさらなる高みへと引き上げます。
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DAIKEN トリニティグランデ
幅広・立体感の意匠にこだわった化粧床材。303mm幅で表面の質感にこだわり、立体感のある張り上がりを実現します。
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DAIKEN グラビオルーバーUB
空間に高級感を与える不燃造作材。カジュアルからトラッドまで幅広いインテリアに対応し、空間を彩ります。軽量で加工性にも優れています。
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DAIKEN ここち和座 敷き込みタイプ 穂波
和モダンの空間をつくる、フロアーとの組み合わせが魅力の畳風床材。フロアーと同じ12mm厚で下地などの調整が不要です。
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YKK AP FRAMEⅡ(フレームⅡ)
木質耐震フレームに高性能樹脂窓 APW 330 を組み合わせ、住まいの耐震補強と窓まわりの断熱化を同時に実現します。
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YKK AP APW 430
高性能トリプルガラスで、世界トップクラスの断熱性能を実現した樹脂窓。シンプルなデザインで、美しい外観を演出します。
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YKK AP マドリモ
断熱窓 戸建用壁工事不要のカバー工法で、古い窓を最新の断熱窓にスピード交換。断熱性の向上で、快適で健康、ローエネな暮らしに一新できます。
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YKK AP ドアリモ
玄関ドア1日で簡単に交換できる玄関ドアのリフォームで、外気の侵入を抑え、夏は涼しく冬は暖かい玄関に変わります。
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TDY オンラインリフォーム
相談センターご自宅にいながら、お持ちのスマホ・パソコン・タブレットで、簡単にリフォームについてご相談いただけます。
※この記事内容は、2024年11月27日時点での情報です。ご了承ください。
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