
冬の冷え込みや夏の酷暑に見舞われるたび、「なんとかならないものか」とぼやきたくなる人も多いのでは。そこでお勧めしたいのが、断熱リフォームです。わが家の断熱性能を高めることで、外気温や日射熱の影響を大幅に低減して効率よく快適な室内環境をつくり出すことができるようになります。そのメリットや施工方法、お得な補助金などについてご紹介します。
断熱リフォームで
新築並みの高性能住宅を実現
かつて兼好法師は「徒然草」で「家のつくりようは夏をむねとすべし」と説きました。冬は寒くても火を起こしたり、重ね着をすればなんとかなるけれども、夏の暑さに対処した家でないと耐えられないということをつづっています。
これに対し、現代では、床・壁・天井(屋根)に断熱材を巡らせるなど建物の断熱性を高めることで、夏の熱気を遮るようになりました。この仕様は同時に冬の冷え込みも抑えることにつながり、年中、快適な室内環境をつくっています。
近年は地球温暖化対策として、低炭素化や省エネルギーなどの観点から、気密・断熱の技術が急速に進み、家に求められる性能も高い水準になってきています。2025年4月からは、全ての新築住宅・非住宅※について、省エネ基準への適合が義務付けられるようになります。高性能住宅は、これからの当たり前になるのです。
※非住宅:住宅以外の建設物
断熱性の低い住宅では、エアコンやストーブで暖房していても、熱がどんどん家の外に逃げていってしまうため、温度計の数値ほどの暖かさを感じられないことがよくあります。特に熱の出入り口となる窓付近では、外の冷気が室内にたまって床を冷やす「コールドドラフト」という現象も発生します。冷気が床面にたまり、暖気はどんどん天井付近に上っていくので、顔は火照るのに足元は冷たいという不快な状態に...。
一方、断熱性の高い高性能住宅では冷暖房の効率が高まり、光熱費の負担軽減にもつながります。また、断熱材で囲まれた住宅の室内は、均一な温度で保たれるので、部屋ごとの温度差も小さくなり、安定した温熱環境で過ごせるのは大きなメリットです。
現在、十分な断熱性のない住宅であっても、断熱材を入れ直したり、窓などの開口部の断熱性を高めたりする断熱リフォームを実施することで、新築住宅と同等の水準の性能にまで引き上げることが可能です。
もし、キッチンや住宅の内装・外装を新しくするのであれば、床・壁・天井を撤去するついでに断熱リフォームを施すことをお勧めします。その分、リフォーム費用は上がりますが、住み始めてからは光熱費などのランニングコストが大幅に削減できますし、健康や快適性など、お金に換えられないメリットもたくさん得ることができるからです。

高性能住宅なら、
人も家も健康的な環境に
ヒートショック・熱中症対策
断熱性の低い住宅では、冬場は暖房を入れた部屋だけが暖かく、それ以外の廊下や脱衣所、浴室などは外気に近い温度で底冷えします。暖かいリビングから寒い廊下を通り、さらに脱衣所で服を脱いで、浴室で熱い湯に浸かる、という形で急激な温度の変化を受けると、血圧が急激に変化して心筋梗塞や脳卒中を引き起こす「ヒートショック」と呼ばれる健康被害が発生すると言われています。
高性能住宅では、部屋ごとの温度差が小さくなるので、ヒートショックのリスクを大幅に軽減できます。また、夏の熱気も断熱材で遮られるため、室内の温度が上がりにくく、夏の暑さによる熱中症も起きにくくなります。
睡眠の質の向上
世界保健機関(WHO)では、健康のため2018年に冬の室内最低温度を「18度以上」と強く推奨しており、小さい子どもや高齢者に対してはさらに暖かくするように求めています。高性能住宅であれば、寝る前の室温を維持しやすく、健康的な環境を守ることが可能です。
結露によるカビや腐食の抑制
また、古い建物に使われているような断熱性の低い窓では、屋外の冷気で冷えたガラスによって室内側の暖かい空気が冷やされて、空気中の水分が結露します。そうした湿気がカビや腐朽菌を呼んで、住まい手の健康被害を引き起こしたり、壁内結露となって家の柱や梁などの構造を劣化させるケースもありました。
一方、外気の影響を受けにくい高性能住宅では、結露が起きにくく、カビや腐朽も発生しにくいので、柱や梁などの構造も湿気の影響が少なくなります。つまり、人だけでなく、家の寿命も長くする効果があるのです。

窓など開口部の
改善だけでも効果的
多岐にわたる多くのメリットを生み出す断熱リフォーム。その基本は、屋根・外壁・窓など家のいわゆる「外皮」の性能を高めることにあります。以下にそのポイントをご紹介します。
窓・ドア
窓や玄関は、家の中でも熱の逃げ道になりやすい部位です。断熱性の高い樹脂製の障子+複層ガラスもしくはトリプルガラスの窓に交換したり、既存の窓の内側に内窓を新たに取り付けたりするだけでも効果的。また玄関ドアも断熱タイプに交換すると、玄関ホールまわりの冷え込みを改善できます。窓も玄関も、既存の枠を生かして交換する「カバー工法」というやり方であれば、壁を壊すこともなく1日で取り替えることが可能です。

床・壁・天井
築年数の古い住宅の場合、断熱材が入っていなかったり、入っていても経年劣化していたり、施工が不十分で機能していないことがしばしばあります。これを改善するためには、床下や壁内、天井裏などに断熱材を隙間なく充てんする、もしくは断熱ボードで空間全体を包み込むなどするとともに、気密シートを巡らせて気密性と断熱性を向上させます。また、結露対策には、調湿性能のある天井との併用が効果的です。こうした断熱工事には、断熱材や施工方法などにさまざまな選択肢があるので、リフォーム会社とよく相談することをお勧めします。

トイレ・脱衣室・浴室
服を脱ぐ場所なので特に冬場の寒さ対策が重要です。床下や外壁に面した壁に断熱施工して、冷え込みを防止。浴室は在来工法からシステムバスに変更するだけでも断熱性が向上します。トイレでは暖房便座、浴室では浴室乾燥暖房機などを設置すると、寒さ対策になります。また浴室では断熱風呂ふたや保温浴槽を採用すると、お湯の適温を長く保つことができ、省エネにもつながります。窓のリフォームも一緒に実施するとさらに効果的です。

補助金制度を利用して
お得に断熱リフォーム
断熱リフォームについては、省エネや低炭素化など社会的な貢献にもつながるため、国や各自治体から費用の一部を助成してくれる支援制度があります。ただし、利用にあたっては所定の条件を満たす必要があり、申請の期間なども決まっています。リフォーム会社の担当者に制度の概要や申請の時期などを確認し、必要な書類や資料なども早めに手配するようにしましょう。
2025年度については、断熱リフォームに対して以下のような補助金制度が利用可能です。
「先進的窓リノベ2025事業」(環境省)
リフォーム後に窓(玄関ドア)の断熱性能が一定の基準を満たす工事が対象です。
内窓の設置 | 12,000~106,000円/箇所 |
---|---|
外窓交換(カバー工法) | 58,000~266,000円/箇所 |
外窓交換(はつり工法) | 46,000~266,000円/箇所 |
ガラス交換 | 5,000~55,000円/枚 |
上限200万円/戸で、対象費用の2分の1相当の補助金が受け取れます。窓の改修と同時に玄関ドアを断熱性能の高いタイプへリフォームする場合も補助対象となります。いずれも2024年11月22日以降の工事着手が対象になり、交付申請の受け付けは2025年3月下旬~12月31日までとなります。
※2024年11月29日時点の情報です。
「子育てグリーン住宅支援事業」(国土交通省・環境省)
①開口部の断熱 ②躯体の断熱 ③エコ住宅設備の設置の3種が必須工事で、このうち2種以上を実施する必要があります。①は、具体的にはドア・窓の高断熱化、②は、外壁・天井・床の断熱、③は、節湯水栓・高断熱浴槽などの設置など。これらに加えて、子育て対応改修、バリアフリー改修、高機能付きエアコン設置なども含めることができます。
Sタイプ | 必須工事3種すべて実施で上限60万円/戸 |
---|---|
Aタイプ | 必須工事3種のうちいずれか2種を実施で上限40万円/戸 |
工事内容と金額の組み合わせは上記の2種類があります。
※2024年11月29日時点の情報です。
また、一定の性能以上のリフォームを実施した場合、下記のような税制での優遇措置を受けることもできます。こうした「リフォーム減税」が適用されるのは、耐震、バリアフリー、省エネ、同居対応、長期優良住宅化、子育て対応のリフォームです。
※2024年11月29日時点の情報です。
補助金について詳しくはこちらもご覧ください。
所得税の税額控除
工事内容が一定の基準を満たし、かつ面積など家屋の要件を満たしていれば、確定申告によって所得税の控除が受けられます。省エネリフォームの場合、窓の断熱改修を必須工事として、天井、壁、床の断熱改修や高効率給湯器の設置などが対象。
固定資産税の減額措置
一定の要件を満たすリフォームでは、工事をした翌年の固定資産税が減額になります。その種類によって減額幅は異なり、耐震は2分の1減額(家屋面積120㎡相当分まで)、バリアフリーと省エネが3分の1減額(バリアフリーは同100㎡相当分、省エネは同120㎡相当分まで)、長期優良住宅化は3分の2減額(同120㎡相当分まで)となります。工事の完了後3か月以内に市区町村などに申告手続きをする必要があります。
贈与税の非課税措置
住宅取得資金について、父母や祖父母など直系尊属から贈与された分は、一定額まで税金がかかりません。リフォーム費用も対象になります。非課税になるのは500万円(省エネなど性能を向上させるリフォームは1000万円)までが上限となります。
住宅取得・リフォーム支援制度については「リフォームお役立ち情報」もご覧ください。
このほか、地方自治体でも、独自の補助金制度、有利な融資や減税といった優遇制度などもあります。「住宅リフォーム推進協議会」のWEBサイトでは、自治体ごとの補助金について検索することができます。

ノウハウの豊かな
リフォーム会社に相談を
断熱リフォームを実施すると、生活空間が断熱材と気密シートでくるまれることになるので、外気だけでなく、音を遮断する効果ももたらされます。外の交通騒音などが室内に入りづらくなり、リフォーム前よりも静かな環境が期待できます。
また室内から屋外へ漏れる音も小さくなります。遊びたい盛りの小さいお子さんがいる家庭や、音楽を楽しみたい場合などにも、周囲への気遣いが軽減できるというメリットがあります。
予算や目的によっては、窓だけ、寝室だけといった断熱リフォームも可能です。家全体を施工するよりもリーズナブルなコストで温熱環境の改善を図ることができます。また、天井や床だけでも断熱すれば、夏の2階の暑さや冬の床の冷たさを軽減できます。小屋裏と床下から工事を行うので、住みながらリフォームできる点もメリットです。窓の交換ができないマンションなどでは、内窓を活かし手軽に窓の断熱性能を高められます。
ただし、断熱リフォームには、気密・断熱についての正しい知識と確かな施工技術が必要です。気密や断熱は、わずかでも断熱材など部材の間に隙間が生じると、その性能は十分に発揮されません。また、気密や断熱がうまくいっていても、家全体の通気や換気の計画が考慮されていない場合、湿気や熱気、ハウスダストなどがこもってしまうことがあります。
また、断熱性の高い住宅では、住まい手が倹約のつもりで24時間換気を止めてしまったり、不用意に加湿器を使いすぎてしまったりすると、室内の空気の質が低下してしまうことがあります。住宅の性能をきちんと理解したうえで、その仕組みをうまく活かす住まい方をしたいものです。
依頼先を決める際には、断熱リフォームの実績が豊富で、確かなノウハウのある会社を選ぶように心がけましょう。技術や建材、補助金などの最新情報についても詳しい会社であれば安心です。
完成した住宅に気密検査を実施して性能を確認したり、お施主様にわかりやすく性能について説明できる会社であれば、相談する価値があると言ってよさそうです。

適切な断熱リフォームを行えば、確実に効果を実感できるのがいいところ。エアコンを最低限稼働させれば、快適な状態が維持できます。冬でも軽装で過ごすことができ、夏も屋外の湿気を呼び込まずジメジメとした不快感に悩まされにくくなります。年中、春先のようなさわやかな環境を満喫できるようになるはずです。
TDYのコラボレーションショールームでは、TOTOの水まわり商品、DAIKENの建材、YKK APの窓など、断熱リフォームに活用できる商品をご覧いただけます。断熱性能を備え浴室の快適な温度を保つTOTOのシステムバス「シンラ」、高気密・高断熱住宅の空気を新鮮に保つDAIKENの「24時間換気システム エアスマート 全室換気タイプ」、壁工事不要のカバー工法で古い窓を最新の断熱窓にスピード交換できるYKK APの「マドリモ 断熱窓」などもご紹介しています。
またTOTO、DAIKEN、YKK APがご提案している「十人十家(じゅうにんといえ)」でも、それらの商品を取り入れたさまざまなリフォーム空間をご覧いただけますので、ぜひご活用ください。


断熱リフォームに関わる
商品のご紹介
TOTO、DAIKEN、YKK APには断熱リフォームを含む、高性能住宅の実現に役立つ商品がそろっています。
ここでは、代表的な商品の一部をラインナップしました。
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TOTO 戸建て住宅向けシステムバスルーム
シンラ「上質で心休まる穏やかな時間をすごす」リラックスを追求した先進機能を堪能できるバスルームです。
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TOTO ウォシュレット一体型便器
ネオレストLS高度なクリーン技術と癒やしをもたらすデザイン。これからの暮らしをさらなる高みへと引き上げます。
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DAIKEN 24時間換気システム
エアスマート 全室換気タイプお部屋の空気を新鮮に保つ換気システムです。
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DAIKEN 吸音ウール
防音建材の遮音性能、吸音性能を確実に発揮させるため空気層に充填する吸音材です。
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DAIKEN クリアトーン12SⅡ
調湿性能で住まいを快適に暮らせる空間へ。吸音性能も併せ持ち、気になる反響音も抑えます。
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YKK AP APW 430
高性能トリプルガラスで、世界トップクラスの断熱性能を実現した樹脂窓。シンプルなデザインで、美しい外観を演出します。
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YKK AP マドリモ
断熱窓 戸建用壁工事不要のカバー工法で、古い窓を最新の断熱窓にスピード交換。断熱性の向上で、快適で健康、ローエネな暮らしに一新できます。
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YKK AP ドアリモ
玄関ドア1日で簡単に交換できる玄関ドアのリフォームで、外気の侵入を抑え、夏は涼しく冬は暖かい玄関に変わります。
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YKK AP マドリモ
内窓 プラマードUいまある窓の内側に新しい窓を取付けて二重窓に。1窓約60分の簡単施工で断熱性・気密性が高まります。
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TDY オンラインリフォーム
相談センターご自宅にいながら、お持ちのスマホ・パソコン・タブレットで、簡単にリフォームについてご相談いただけます。
※この記事内容は、2025年03月05日時点での情報です。ご了承ください。
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