(写真提供/YKK AP)
築年数を経た建物をリノベーションによって快適で安全に暮らせる住まいに再生する取り組みが、近年、国を挙げて推進され、自治体や企業でも普及に向けて進められています。YKK APの「戸建性能向上リノベーション実証プロジェクト」もその一つ。
今回は、このプロジェクトを通して、住宅の性能を高め快適な住まいにするためのリノベーションのポイントをお伝えします。
中古住宅でも安全で快適な暮らしを実現する
戸建て性能リノベーションプロジェクト
「戸建性能向上リノベーション実証プロジェクト」は、YKK AP株式会社が日本各地の住宅事業者と連携し、中古住宅をリノベーションすることによって、新築住宅と同等もしくはそれ以上の断熱・耐震性能に引き上げ、「リノベーションでも安全で快適な暮らし方が実現できるのか?」を実証、普及させることが目的、2017年にスタートしました。2019年までに全国で11件の事例があります(2019年12月時点)。
価格を抑えて中古住宅の断熱・耐震性能を
格段にアップさせた
「信州 小諸の家」
今回は、戸建性能向上リノベーション実証プロジェクトから「信州 小諸の家」をご紹介します。プロジェクトのパートナーは、長野県佐久市を中心に注文住宅を手掛ける株式会社リューケンハイム。デザイン住宅ではエリアの中でも多くの実績があり、高い技術力を持つビルダーです。
実は長野県の空き家率は全国第3位。別荘地が多いという事情はあるものの、地域にとって空き家対策は重要な課題です。「全国的に新築着工棟数の減少も予想されるので、地元企業である当社も、中古住宅を性能向上リノベーションして活用することを検討していました」
(リューケンハイム 髙橋 典久社長)。
中古住宅は建物の状態の良し悪しに関わらず、築20年以上経てば建物の価格は0円とみなされることがほとんどです。今回の事例では事業者が「状態の良い中古住宅をリノベーションしてから販売する」方法。ですから、価格を安く抑えつつ、リフォームによって新築以上の性能を生み出すことも可能。住まい手にはコストパフォーマンスのいい住宅入手法となります。
ただし、老朽化した建物の状態を判断しながら改修プランを作成して、適切に施工するにはノウハウと技術力が必要。また、地域の気候条件などを知り尽くしていないと困難です。「地域に密着したビルダーだからこそ、できることだと思っています」(髙橋社長)。
断熱性を高めて
冷暖房に頼りすぎない家に。
窓まわりを補強して、
中古戸建住宅でも耐震等級3*を実現*住宅性能表示制度における耐震性能の最上級。建築基準法レベルの耐震性能の1.5倍の強さを示す
今回のプロジェクトの対象となったのは、小諸市の高台に建つ築45年の木造2階の戸建住宅。性能面については「自然の力を活用して設備に頼りすぎない家」がリノベーションのコンセプトとなりました。
断熱性の高い窓やドア、壁材で室内の温度差を軽減
敷地のある長野県東部は内陸性の気候で寒暖の差が激しく、冬は札幌市と同じくらいの冷え込みに見舞われる一方、真夏には最高気温が35℃近くまで上がることもあります。この外気の影響を抑えるため、リノベーションのプランニングにあたっては最高レベルの断熱基準(HEAT20・G2)を目指しました。
- Before
- 天井:ガラス繊維系断熱材(グラスウール)100mm
壁:同50mm
床:発泡系断熱ボード30mm - ↓
- After
- 天井:セルロースファイバー320mm
壁:現場発泡断熱材100mm+発泡系断熱ボード40mm
基礎:現場発泡断熱材120mm 500mm折り返し
いずれも従来より高い性能の断熱材に替えて厚さも増加。特に壁については発泡ウレタン吹き付けに発泡系の断熱ボードも加えて性能を高めています。
そのうえで南側の開口部を大きく確保して冬の太陽熱をしっかり取り込めるようにする一方、夏の直射日光は庇やバルコニーで遮るようにしました。さらにYKK APの高性能トリプルガラス樹脂窓「APW 430」、大開口スライディング「APW 511」、高断熱玄関ドア「イノベストD70」も採用。自然のエネルギーの利用と、高断熱を両立しており冷暖房の効果を逃さない家になりました。光熱費の削減効果も抜群です。
「このくらいの性能があると、室内の温度差を小さくできて、幼いお子様からご高齢の方まで健康的に暮らすことができるようになります」(YKK AP株式会社 リノベーション本部 事業企画部 住宅企画室 岩崎 武)。
資産価値につながる耐震性の高さ
耐震性については既存の構造をチェックし、耐震診断を実施。開口部の大きさと柱や耐力壁の配置のバランスを図りながら耐震補強が計画されました。今回、開口部にはYKK APの「フレームⅡ」を採用。これは木質耐震フレームに高性能樹脂窓「APW」シリーズを組み合せたもので、耐震補強と窓まわりの断熱化を同時に行えます。
そのほか、基礎や構造の補強等も行い、建物は最高レベルの耐震等級3 を実現(建築基準法で求められる性能の1.5倍の強度)。耐震等級3であれば震度6強~7の地震でも、軽い補修程度で住み続けられます。築45年の家でも、家族の命を守るだけでなく、資産としての価値を守ることも可能になりました。
子育て世代が住みやすい間取りとデザイン
山に囲まれ、自然豊かな信州。敷地のある高台からは遠くの山々まで見渡せる絶景が広がります。そのような立地条件を生かすため、意匠面では「長野県の自然と眺望を活かしたデザイン」がコンセプトとなりました。
信州ならではの
ナチュラルテイストに
既存の和室で区切られた間取りは、光や風が通りにくく、閉塞感もあることから、1階は間仕切りを取り払って大きなワンルームのLDKに変更。キッチンは「ミッテ」(TOTO株式会社)の対面型を採用して、調理などの作業中でも家族の様子を見守れるようにしました。
2階は2部屋しかありませんでしたが、ご夫婦と子ども2人の4人家族を想定して1部屋を増築。また各部屋には収納部を新たに設けて一般的な戸建住宅よりも収納量を増やし、育児や家事に追われてもモノを片付けやすいようにしています。
玄関は南側から東側へ移動。これによって空いた敷地の南側の間口いっぱいにウッドデッキを新設しました。このLDKからひと続きのアウトドア空間は、家族の開放的なコミュニケーションスペースとなっています。さらに玄関まわりは敷地内の既存の樹木をレイアウトし直すなど、ガーデンリノベーションも実施。周囲の自然と調和のとれた外観に仕上げられています。
外壁と内壁は土をイメージして塗り壁をメインに。そのほか、床は石目調の「ハピアフロア石目柄(鏡面調仕上げ)」(大建工業株式会社)、壁には本物の石材を使用したかのような風合いの「グラビオエッジ」(大建工業)、デッキとバルコニーには木目調の建材を使うなどして、ナチュラルな雰囲気を演出。性能を向上させるとともに意匠や間取りの面でも魅力的に生まれ変わりました。
ニーズが高まる郊外の
空き家リノベーション
2020年に入ってコロナ禍とその対策の影響を受けて、社会的に外出が制限され、自宅で過ごす時間が増えてきました。テレワークで通勤の必要性が減り、より広い敷地と自然環境を求めて郊外の戸建住宅に注目する人々も多くなっているようです。リノベーションによって郊外の空き家の性能を向上させ、新たな生活拠点にするという選択肢も、検討の価値があるかもしれません。
第11回でも、空き家活用リフォームのポイントと事例をご紹介しています。ぜひ合わせてご覧ください。
住宅性能を高める
リノベーション商品のご紹介
戸建性能向上リノベーション実証プロジェクト「信州 小諸の家」で採用された商品をご紹介します。
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TOTO 戸建住宅向けシステム
バスルーム
サザナ掃除のしやすさ・収納の便利さなど、おふろを使う人、お手入れする人、みんなにとっての「しあわせ性能」を追求したバスルームです。
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TOTO システムキッチン ミッテ
スタイリッシュで機能的。機能も価格もシンプルなシステムキッチンです。
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TOTO サクア
お掃除しやすい陶器ボウルをはじめ、家事や身支度がはかどる機能が満載です。
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DAIKEN トリニティ
表面の質感にこだわり、広幅なデザインで立体感のある仕上がりを実現。お手入れのしやすさも魅力です。
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DAIKEN 不燃壁材 グラビオエッジ
深彫り調のエンボス加工でエッジの効いた陰影と素材感のある意匠が魅力の装飾不燃壁材。壁面にアクセントを加えて、お部屋を個性的に演出します。
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DAIKEN hapia(ハピア)
リビングドア豊富な選択肢の中から選べるカラー&デザインが、多彩なインテリアテイストを表現。一人ひとりの暮らしや使い勝手に寄り添ったドアをご提案します。
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YKK AP APW
高い断熱性と先進の機能、高いデザイン性をもち合せた窓シリーズです。10年保証を実現し、永く安心してお使いいただけます。
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YKK AP イノベスト D70
業界トップクラスの断熱性を実現し、意匠性、使い心地までハイクオリティをめざして誕生した高断熱玄関ドアです。
-
YKK AP フレームⅡ
窓を減らさず耐震補強を可能にし、同時に窓まわりの断熱化まで行えます。新築でもリフォームでも「耐震+断熱」を実現します。
-
YKK AP ルシアス シリーズ
建物とエントランス、エクステリア全体でトータルコーディネイトができ、統一感のある美しい外観を演出します。
-
YKK AP リウッドデッキ200
木粉とプラスチックを主原料とし、耐久性に優れた素材を使用。天然木特有の温かみを生かしたデッキ空間を作り出します。
※この記事内容は、2020年7月30日時点での情報です。ご了承ください。
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