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店舗から住居へ編
K様邸 第13回
20年間の思い出が詰まったスナックを
親子が安らげる住空間に大転換
カラオケで熱唱できるステージとママの笑顔が迎えてくれる、地元民に人気の憩いの場――。2016年末、K様のお母様が営まれていたスナックが閉店しました。それを機に店舗を改修し、ご家族の住空間へと大転換。今回は、見晴らしの良いおしゃれなカフェ風住まいへと見事変貌を遂げた経緯について、じっくりと伺いました。
リフォームのきっかけは、親類が集まったお正月の飲み会
K様:この敷地内にはもともと、母が経営するスナック、両親と私が暮らす住居、弟夫婦の住居の3軒が建っていました。そのうちスナックだった建物を、このたび住居へとリフォームしました。
元の住居ではなく、スナックだった建物を住居にされたのですね。
K様:はい、旧住居は築40年以上で老朽化していたので、いろいろ住みづらさを感じていました。ちょうどそのころ父が病気を患ったことなどから、長らく続けていたスナック営業を終了することにしたのです。その流れで、築年数の浅い店舗の方をリフォームしようかという話になりました。
ご家族皆さんで決めたのですか?
K様:一昨年の大晦日にスナックを閉店し、翌々日の1月2日、親戚一同が集まってお正月の飲み会をしているときに決めました。スナックだった建物の今後の用途についてみんなで話しているときに、「店舗を住居にリフォームすることはできるのか?」と疑問が湧いたのです。だったらこの場で、弟夫婦の家を新築してくれた工務店の社長さんに聞いてみようと、電話をかけたのが始まりです。それから、あれよあれよという間にリフォームが本格化していきました。
それは面白い。では、工務店さんは最初からそこに決めていたのですね?
K様:そうなんです。弟夫婦の家を建てるとき、プロの発想でリードしながらも、こちらの意見を柔軟に取り入れて、「一緒に作っていく」感覚を大切にしてくれる工務店さんだと、評判を聞いていたのです。だから、「いずれリフォームするときはぜひお願いしよう」と決めていました。
見事な眺望を生かした、大きな窓のあるカフェ空間が誕生
新しいこの住まいは、遠くの山々や街並みが見渡せる景観を上手に生かしていますね。とても居心地がいいです。
K様:実はこれ、工務店の社長さんのあるエピソードから生まれたアイデアなのですよ。弟夫婦の住居を建てた当時、ここはスナックだったので、職人さんが休憩する場所として利用してもらいました。そんなわけで、南側のFIX窓からの眺望の良さは社長もよくご存知だったのです。それで、1月2日に私たちが相談の電話をしたときは、社長はちょうどご家族で沖縄旅行を楽しんでいる最中でした。素敵な巡り合わせが訪れたのは、電話を切った直後のこと。社長ご家族が「沖縄美ら海水族館」近くのカフェを訪れたところ、そこには、カウンターから大きなFIX窓を通して眼前の海を望める、贅沢な空間が広がっていたそうなのです。その光景を目にしたとき、「これだ!」とひらめいたのですって。
それで、「海カフェ」ならぬ「山カフェ」のコンセプトが誕生したのですね?
K様:打ち合わせでその提案を受けたときには、もう胸が躍りました! 当初、私は「スナックを住居にできるだけで十分」と思っていたくらいなので、私の期待をはるかに超えていたのです。朝焼けも夕焼けも夜の星空も、この窓から眺める景色は言葉を失うくらいきれいで、最高の「山カフェ」が完成しました。
カフェ空間と土間が一体化。ご近所さんとのおしゃべりにぴったり
しかもこのカフェスペースは、土間も兼ねていますよね。土間の形はよくある正方形ではなくて、カウンターに沿った細長い「通り土間」になっていてとてもユニークです。この一枚板のカウンターは、スナックで使われていた物だそうですね。
K様:その通りです。「愛着のあるカウンターが再生するなんて!」と、ただただ感激しました。「カウンターだけは残したい」と社長が苦心して、丁寧に解体して磨いてくれたのです。
住まいの一番いい場所に、「見事な景色を望める窓」を生かし、「懐かしいカウンター」を置くという心遣い。お父様やお母様も喜んでくれたことでしょうね。
K様:ここは田舎ですから、ご近所の方が頻繁に訪ねてきます。そんなとき、わざわざ部屋に上がっていただかなくても、この土間でおしゃべりしたりお茶を飲んだりできるのはとても便利ですね。「カフェ空間×土間」は、まさにわが家にぴったりのアイデアです。
ワンポイントアドバイス
カウンターのある土間は遊び心満点。半分「外」の位置付けで、来客時にも活躍
K様の工務店さんは、K様邸が来客の多い家であることをよくご存知だったそう。そこでコミュニケーションの場として、屋内と屋外の中間的な場所にあたる、カウンターを配した土間を提案。ご家族のくつろぎの場でありながら、ご近所付き合いにも役立つフリースペースが誕生しました。また、この土間は京都の町家で知られる「通り土間」のような細長い形で、廊下の役割も兼ねています。段差を作ったことでバリアフリーの住空間にリズムが生まれ、機能一辺倒ではない、奥深い雰囲気を醸し出すことに成功しています。
コンパクトな床面積でも広々。仕切りの少ないワンフロア空間
玄関から入ってすぐにリビングが見えるこの間取りは、広々として気持ちがいいですね。照明もダウンライトで統一されてすっきり。具体的な間取りはどのように決めたのですか?
K様:床面積が約85m²とあまり広くないので、間仕切りを少なくして空間を大きく使いたいと最初にお伝えしました。以前の住まいは、廊下や部屋が細かく仕切られている昔ながらの日本家屋で、冬の寒さが堪えました。こたつのあるリビングはいいけれど、他の部屋や廊下、階段などはとても寒くて…。暖房効率という点でも、家の中央にリビングがあるシンプルな間取りがいいと思ったのです。
断熱技術が進化した、現代ならではの空間づくりですね。かつては空間を区切ることで部屋ごとの暖かさを確保していましたが、最近は、家の中を仕切らないことで「家中どこでも暖かい住まい」を実現できるようになりました。
K様:間仕切りがないと家族みんなの様子も自然と分かるし、お掃除ロボットを使った日々のお手入れもスムーズ。ちょうど弟夫妻の住居も、同じような間取りなのですよ。広々としたワンフロア空間はこの辺りでは斬新と言われますが、弟の奥さんである義妹が「こっちの方が、住み心地が断然いいよ」とすすめてくれました。
実際に住んでいる人のアドバイスがあると心強いですよね。
K様:実は今回のリフォームは、弟夫婦や義妹のお母様など、大勢の外野のアイデアが凝縮しているのです。工務店さんとの打ち合わせにはいつもみんなで参加して、積極的に意見を出してくれました。センスのいい義妹とそのお母様は間取りとインテリア担当、料理上手な私の母はキッチン担当、掃除が好きな私はお手入れ担当というように、みんなで知恵を出し合って楽しみながら作ったのです。
ワンポイントアドバイス
人気のワンフロア空間は、コミュニケーション、光熱費、お手入れ面でも◎
かつての日本家屋といえば、廊下があって一部屋ずつ閉め切る間取りが基本。最近は断熱・気密技術が向上したことで、廊下や仕切りを省いたオープンな空間設計が主流になりました。以前の住まいと比べて廊下や壁にスペースを取られないため、少ない床面積でも広々とした住空間を作れるというメリットがあります。リビングから各部屋へと出入りするこのような間取りは、会話を増やしたいご家族にもおすすめ。エアコンなどの光熱費を抑えることができる上、掃除機もかけやすくなります。さまざまなメリットが期待できる間取りだと言えますね。
プロフィール
K様(群馬県)
70歳代のご両親と3人暮らし。自宅敷地内でお母様が20年間経営なさっていたスナックを、ご家族3人の住まいにリフォーム。2017年、隣に住む弟ご夫婦の協力を得て、おしゃれなカフェ風住まいを完成させました。
江口恵津子氏(株式会社ヴェルディッシモ)
建築デザイナー、インテリアコーディネーター。専業主婦を経てリフォームの世界に入る。「大改造!!劇的ビフォーアフター」(テレビ朝日)など出演多数。著書に『わが家のスローリード・リフォーム』(PHP)がある。
リフォーム情報
家族構成 | 父+母+娘 | 面積 | 85.95m²⇒85.95m² | 形態 | 戸建住宅(平屋) | 日数 | 40日 |
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築年数 | 20年 | 費用 | 1,000万円 | ||||
採用商品 | TOTO:キッチン「ミッテ」、トイレ「ウォシュレット一体形便器 HV」、手洗器「ベッセル」、浴室「サザナ」、洗面台「Vシリーズ」 YKK AP:窓「エピソード」、玄関ドア「かんたんドアリモ 玄関ドア」、室内ドア「ラフォレスタ」 DAIKEN:床「ハピアフロア」、「フォレスティア」、下駄箱「フラットタイプ」、畳「ここち和座」 |
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担当店 |
株式会社武井建設
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