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暮らしの整理編
I様邸 第3回
住まい作りの集大成
居心地を追求した最高のリビングへ
もともと暮らしに対する意識が高く、これまでもこだわりの住まいを追求してきたというI様ご夫婦。2014年に、その集大成とも呼べるリフォームを経て、住まいの満足度をより引き出すことに成功しました。今回は、リビングを中心にテラスルームや玄関に手を加え、居心地の良さを実現したI様邸に伺いました。
今の暮らしに合わせて、生活動線を整える
リフォームのきっかけを教えてください。
奥様:家を購入してから20年以上たって老朽化が目立ってきたことに加え、日ごろから使い勝手の悪さを感じていました。そんな中、3人いる子どものうち2人が家を出たのを機に、あふれがちになっていた持ち物を整理したいと思うようになったのです。片付けというのは何か大きなきっかけがないとできないものですから、リフォームがそのきっかけになればと考えました。
使い勝手が悪かったというのは、具体的にどのあたりですか?
奥様:家を購入した際に、キッチンとリビングの動線上に袖壁を付けてもらいました。袖壁を目隠しにすれば、リビングがすっきりすると思ってそうしたのです。でもそれがかえって、キッチンに物が積み上がる状態を招いてしまいました。また、当時は子どもが小さかったため、ダイニングテーブルを現在薪ストーブがある壁際に置き、リビングの中央は子どもが自由に遊べるようスペースを広く取っていました。けれど、子どもの成長とともにそのスペースも必要なくなってきて…。気づけばリビングの片隅だけで生活が完結してしまい、中央のスペースが活用されなくなっていたのです。それで、「テーブルを真ん中に」という発想が出てきました。
リビングの真ん中にテーブルを置いたことで、キッチンへの行き来が自然になりましたね。袖壁は生活動線の妨げになっていただけでなく、死角を作り、キッチンへの光を遮ってしまったのでは。
奥様:その通りですね。リフォームでは茶系だったキッチンを白に変えたこともあり、見違えるほど明るくなりました。
物置から一新。部屋と一体になった快適なテラスルームへ
以前は、テラスルームも物置のようになっていたそうですね。
奥様:テラスルームを増設したのは20年ほど前。かねてより、夏は外の風を感じながらテラスルームで夕飯をいただいたりして、夫婦のお気に入りの空間だったのです。けれど、収納スペースに入りきらない物を、この場所に置くことが増えてきて…。
ウッドデッキだった部分にリビングと同じ床材を貼ったおかげで、室内との一体感が出ていますね。以前はどちらかというと「外の空間」という位置づけだったと思いますが、今はリビングと地続きになった「部屋の一部」であるとともに、中と外をつなぐ中間的な役割を果たすようになりました。
奥様:窓を開けると風通しが良くて、夏はとても気持ちがいいのです。
まだお宅にお邪魔したばかりですが本当に居心地が良くて、リフォームによって暮らしの質が高まったことを強く感じますね。大きな理由として、「距離感の良さ」が影響していると思います。リビングに置かれたテーブルを中心にとらえた場合、テーブルとキッチン、テーブルとテラスルーム、テーブルと薪ストーブの距離感がちょうどいいのです。リビングが暮らしの中心になっていて、そこからそれぞれの生活空間がつながっていることが、居心地の良さの秘密ですね。
ワンポイントアドバイス
居心地良さのカギは家具の配置
I様邸では、「自然な状態」ですべての物が配置されているのが素晴らしいですね。それって実は、できそうでできないことなのです。そのためにまず考えたいのは、物の収納場所を確保すること。「使うものは使う場所のそばに」は基本です。その次に、家具の最適な配置を考えてみてください。すべての家具が主張しすぎることなく、あるべき場所にあるのが理想的です。ご自身の暮らしにフィットする配置を見つけることができたら、居心地がグッと良くなるはずですよ。
自然は育てるもの。年月の中で、丹精込めて生み出す庭
さらにリビングには、テラスルームの反対側にも窓がありますね。視線をずらすと、表情が異なる緑が自然と目に入ってきます。緑に囲まれているような雰囲気で、とても良い効果を与えていますね。
奥様:テラスルームの外にある庭では、四季折々の自然に触れることができるのですよ。春先のハナミズキ、初夏の新緑、真夏にはサルスベリが白い花を咲かせ、秋になると赤と黄に染まった紅葉を楽しむことができます。まさに今日は絶好の紅葉日和ですね。庭と玄関へのアプローチを飾る草木は、これまで何回も手入れを重ねてきました。
やっぱりそうですか。本当に素敵な庭で、ここにいると時間を忘れてしまいますね。建築は比較的短期間で形にすることができますが、植物はじっくり月日をかけて育てなくてはなりません。何十年にもわたって愛情を込めて育ててきた庭だということを、肌で感じます。
奥様:アプローチに敷き詰めたレンガは、イギリスから取り寄せた古材。かなりこだわっています。
昔から、住まいに対して深い想いをお持ちなのですね。今回のリフォームは生活の中心空間を見直されたわけですから、住まい作りの集大成ともいえますね。
プランニングでも施工でも。とことん話し合える工務店
リフォーム前は家の中の空気が回りづらく、湿気が多かったそうですね。
奥様:結露によるカビに悩まされていました。それを見た工務店さんから、「内装に取りかかる前に、窓をすべて取り替えて住環境を整えましょう」と提案されました。私からはテラスルームの開口部を広くするとともに、リビングを有効活用したいという要望を伝えました。
工務店さんとは、どのようにプランを固めていきましたか?
奥様:要望を伝えたら、ほどなくして工務店さんからフィードバックが返ってくるというふうに、キャッチボールを何度も繰り返しながら進めていきました。工務店さんに任せきるのではなく、こちらからも積極的に要望やアイディアを投げかけていきましたね。ですから、互いに力を合わせて作り上げたという実感があります。例えばスイッチの形状1つ決めるにしても膨大な種類がありますが、私たちが納得するまで時間を取ってくださいました。
だからこそ、この居心地の良さができあがっているのでしょうね。設計者が一方的に進めていった場合、リフォーム中はラクかもしれませんが、その後の生活で不便を感じることがあるかもしれません。暮らしやすさや居心地の良さはまさに、密なキャッチボールを重ねた賜物。お互いの納得をベースに作り上げていったことから来る「いい空気」が、部屋にも流れていますよね。
ワンポイントアドバイス
“何となく”を突き詰めよう
暮らしの中で、「何となく嫌だ」とか「何となく使いにくい」という感覚がありますよね。工務店さんとのやり取りでは、それをどう伝えるかが重要なポイントです。「何となく」という感覚は言葉にしづらいものですが、さらに一歩踏み込んで「なぜそう感じるのか?」と突き詰めていけば、ご自身の「大切にしたいこと」や「譲れない想い」が見えてきます。そうしたら、どんなに荒削りでも構いませんから、その想いを工務店さんに伝えてみてください。相手はプロですから、うまく汲み取って形にしてくれますよ。
プロフィール
I様(奈良県)
2年前、築27年になる奈良県香芝市のご自宅をリフォーム。友人を招いてホームパーティーを楽しむのが好きな50代のご夫婦。「趣味は家遊び」と公言するほど自宅での時間を大切にしており、住まいに対して強いこだわりを持つ。
青木律典氏(株式会社デザインライフ設計室)
一級建築士、建築家。代表作に「JID賞ビエンナーレ2014 インテリアスペース部門最優秀賞」など数々の賞に輝いた「シキリの形」(2013)。共著に『これからの住宅をデザインする方法』(エクスナレッジ)がある。
リフォーム情報
家族構成 | 夫+妻+息子 | 面積 | 62.7m²⇒62.7m² | 形態 | 戸建住宅 | 日数 | 81日 |
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築年数 | 27年 | 費用 | 1,600万円 | ||||
採用商品 | TOTO:浴室「サザナ」 YKK AP:窓「エイピアJ」「ワイドスライディング」 |
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担当店 |
株式会社 創造工舎
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