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暑さ・寒さを防ぐ断熱と質の高いインテリアを両立! "木"を活かすマンションリノベーションとは?

暑さ・寒さを防ぐ断熱と質の高いインテリアを両立!

(写真/特記以外、TDY)

建築家の小谷 和也さんは、木材などの自然素材を生かしたマンションリノベーションに20年近く携わり、多くの実績を積み重ねてきました。国産材を内装に取り入れるとともに、住戸の断熱性を高めることで、快適な空間に変えるリノベを提案しています。豊富な経験とノウハウをもとに、マンションならではの断熱施工のポイントや注意点などについて解説していただきました。

プロフィール

小谷 和也さん

小谷 和也さん

1975年生まれ。国産材の注文住宅を手掛ける地場工務店で経験を積んだのち、2006年に独立。中古マンションを木の空間に変える「木のマンションリノベーション」を提唱する。床の遮音性能確保やマンション特有の結露、カビ対策、断熱改修にも取り組み、関西、関東を中心に幅広く設計活動や講演を行っている。オリジナルデザインのたためる家具や雑貨、建材も開発中。

マンションリノベでは断熱改修が必要不可欠

小谷さんの手掛けるリノベでは、断熱改修と木の内装とが常にセットになっています。なぜ断熱改修を重視しているのか、その理由と必要性についてうかがいました。

寒さ・暑さ・結露を軽減し、快適性を支える断熱改修

小谷さんのキャリアのスタートは地場の工務店。国産材による木の家づくりに取り組むなかで、土地の入手に予算を大きく割かなくてはならない注文住宅の現実に疑問を持つようになります。そこで2006年に独立して自分の事務所を設立してからは、マンションリノベを通じて住む人の快適性を最優先した提案をしています。

小谷さんが国産材や珪藻土などの自然素材とともに重視しているのが住宅性能です。「リノベを終えたお客様の住まいを訪ねたところ、窓が結露で濡れていることに気づきました。お客様は"快適になった"とおっしゃいましたけど、結露しているようでは快適な住まいとは言えないのではないか。マンションリノベでは断熱性能を高めることも重要なのではないか、と考えるようになりました」。(以下、発言は小谷さん)。

設計を依頼されるマンションは築古のものも多く、冬の冷え込みや結露、夏の暑さに関する対策は大きな課題だとか。

「コンクリートでできたマンションは木造の戸建て住宅と比べると気密性が高く、室内にこもった湿気が抜けるような隙間がほとんどありません。冬場、外気温に近い窓の付近で空気が冷やされると、その湿気が結露となって窓まわりをびしょびしょにしてしまいます。またコンクリートは蓄熱性が高いので、冷気や熱気をため込んで室温に大きな影響を及ぼし、冷暖房の効果を損なう傾向があります」。このように話す小谷さん自身も、以前、別のマンションに住んでいたとき、北側の壁や押入れの中などに発生するカビに悩まされたことがあるそう。

「外気に面した壁や窓などの断熱性を高めないと、住戸は結露によるカビなどで不健康な状態になりがちです。マンションリノベでは断熱改修は必要不可欠なのです」。

しっかりと断熱性能を高めた住戸であれば、外気の変化の影響を受けにくくなり、冷暖房の効率も向上します。断熱改修を施したうえに、内装に調湿性のある自然素材を多用して、心身にやさしい快適な空間をつくる。これが小谷さんのマンションリノベの手法です。

小谷さんの築40年の事務所兼住宅にて。
小谷さんの築40年の事務所兼住宅にて。

断熱改修によって増築したかのように生活空間が広がる

前述の「断熱改修が必要不可欠」という持論から、小谷さんの「木のマンションリノベ」では、住戸の内装などをすべて解体しスケルトン状態にすることが前提に。コンクリートの躯体をむき出しにして、外気に接する床・壁・天井に断熱材を施工し、開口部には内窓を取り付けるなどして住戸全体の断熱性を高めています。

小谷さん自身も築40年のマンションの住戸をリノベして、事務所兼住宅としています。仕上げとして、内装には国産のスギやヒノキ、漆喰や珪藻土、珪藻土クロスなどを適材適所に使用。北欧モダンや和モダンのシンプルなデザインが設計の基本です。

「日本の一般的な住戸の間取りでは南側にLDKとベランダがあって、北側に寝室が配置されています。エアコンでリビングを適温にしていても、夜、寝室に行ってびっくりするくらいの寒さや暑さでうんざりした経験、ありませんか? 結局、リビング横の和室で寝て、寝室は物置になってしまうケースがとても多いんです。住戸全体の断熱性を高めることで、すべての部屋が快適な温熱環境になります。まるで増築したかのように、住戸をひろびろと使えるようになるんですよ」。

特に影響が大きいのが窓まわりです。既存の窓(性能の低い窓)では外気に近い温度になるので、冬場は結露しやすいだけでなく、空気が冷やされて床にたまり、足元が冷たく感じる原因に。寒い窓まわりに近づきたくないため、くつろげるスペースも狭くなってしまいます。
「夏の日射熱も問題です。高層階の住戸などでは眺望を生かすため、窓が大きい。特に東や西に面した住戸では強烈な直射日光が入るので、夏は大変な暑さになってしまいます」。

窓まわりの断熱性向上のために、小谷さんが採用しているのが、障子や内窓の設置です。

「特に高断熱の内窓を付けるようになってからは、お客様に"エアコンに頼らなくても快適になった"と喜んでいただけるようになりました。断熱リノベは、暑さや寒さも解消されて、健康的な暮らしにつながることが期待できます。私の手がけるリノベーションでは、窓や壁などの断熱改修は必ずご提案しています」。

内窓のバリエーションや選び方などについて説明する小谷さん。
内窓のバリエーションや選び方などについて説明する小谷さん。

マンションならではの断熱改修の留意点

必要最低限のコストで断熱改修を実施するコツや、マンションリノベならではの注意点などについて、設計・施工面で気を付けたほうがよいことをうかがいました。

「温度のバリアフリー」にはお金に換算できない価値がある

小谷さんの場合、断熱施工を施すのは外気に面した部分が中心だそうです。「もちろん、住戸の床・壁・天井の6面すべてに断熱施工できれば、いちばん効果的。でも、外気に面した部分だけでも効果は十分に得られると考えています」。

気になるコストについては、「確かに光熱費は削減できますが、それだけで工事費のもとを取ろうとするのは無理があります」と言います。

「ただ、結露や気温差に悩まされなくなるというだけでも、かなりのストレス軽減になるはず。お金に換算できないメリットは必ず得られると思います」。

リビングからトイレに行くときの凍えるような寒さ。真夏に帰宅した時のこもるような室内の蒸し暑さ。北側の壁や押し入れからの顔をしかめるようなカビの臭い。そうした断熱性能の低さによる不快感を一掃できるとしたら...。断熱改修による「温度のバリアフリー」は、心身にも好影響がおよびそうです。

断熱改修とともに部屋を狭く感じさせない工夫を

一般的に、断熱施工で用いられる断熱材には、無機繊維系(グラスウール、ロックウール)、木質繊維系(セルロースファイバーなど)、発泡プラスチック系(ポリスチレンフォーム・ウレタンフォームなど)、天然素材系(羊毛・コルクなど)があります。

マンションでの断熱改修では、硬質ウレタンフォームを壁や天井に吹き付ける方法がよく採用されています。施工性が高いのでたいていのマンションで採用できることと、膨らんで硬化する性質から隙間なく施工できることが主な理由です。

小谷さんの場合は、数年前から間伐材や製材時の端材などの木片を原料とした木質繊維断熱材を使うケースが増えているそう。「隙間なく吹き付けられて断熱性能が高まり、環境面を考慮した場合の持続可能性も評価できます」。

ただ、マンションの場合は、壁や天井に断熱材を吹き付ける場合、どうしても室内側に施工することになるため、その分、部屋の空間が狭くなるケースがあります。
「空間が多少狭くなっても、それを感じさせないような設計の工夫をすれば問題ありません」。

実際に、これまで下記のような工夫を施してきました。

  • 床を下げて天井高を確保する
  • すっきりとしたデザインの障子でサッシ枠を隠す
  • 天井の低いところと高いところで変化を付けて奥行きを出す
  • 外の景色に視線が向くように障子はフルオープンできるようにする

「最近よく取り入れているのは、窓の手前に奥行60cmほどの、広縁のようなスペースをつくって障子で仕切ること。半分外部のような空間があると、洗濯物干し場やリラックススペースにするなど、多様な使い方ができます。障子をフルオープンすれば室内に広がりも感じられます。ひとつの場にさまざまな表情があると、空間が豊かになるんです」。

小谷さんの事務所兼自宅もマンションリノベ事例のひとつ。ダイニングの天井は205cmと手の届く高さですが、「こんな空間があっても楽しいですよね」と笑います。
小谷さんの事務所兼自宅もマンションリノベ事例のひとつ。ダイニングの天井は205cmと手の届く高さですが、「こんな空間があっても楽しいですよね」と笑います。
小谷邸の掃き出し窓には既存のサッシの高さに合わせて、内窓と障子のレールが取り付けられています。開口部の断熱性を高め、障子で室内の意匠を整えるための工夫です。
小谷邸の掃き出し窓には既存のサッシの高さに合わせて、内窓と障子のレールが取り付けられています。開口部の断熱性を高め、障子で室内の意匠を整えるための工夫です。
小谷邸のリビングはダイニングから一段低くなっています。こうした高さの変化が空間の奥行きを生みます。
小谷邸のリビングはダイニングから一段低くなっています。こうした高さの変化が空間の奥行きを生みます。

マンションのポテンシャルを引き出す断熱リノベの手法

ここでは、小谷さんが手掛けた事例の一部をご紹介します。限られた空間を性能、デザインともにランクアップさせた、さまざまな工夫や配慮をご覧ください。

【ケース1】
窓越しに恵まれた眺望を楽しむ、シエスタベッドの家

兵庫県芦屋市
竣工:2025年8月
建物について:RCラーメン構造 1966年築 64.76㎡

高台のマンションの眺望を生かした事例。窓辺には、可動式のシエスタベッドを配置。
高台のマンションの眺望を生かした事例。窓辺には、可動式のシエスタベッドを配置。
写真:今西浩文(3事例とも)

最初の事例は、築60年のヴィンテージマンションの断熱リノベです。住戸全体に断熱改修を施し、エアコン一台での全室空調も実現。64㎡と限られた広さでありながら、リビングからウッドデッキまで木質の床を連続させて、視覚的な広がりと開放感を生み出しました。
眺めのよい南側は、キッチンとカウンターのみのコンパクトなダイニングスペース、カーペット敷きのピット状に一段下がったリビング、小上がりなどの変化に富んだ構成です。バルコニー沿いには可動式のシエスタベッドを置いて、「空に浮かんでいるような気持ち良さを感じられる」空間としました。

シエスタベッドのある窓そばのリビングの南側は床を一段下げ、カーペット敷きの仕上げに。木質建材に囲まれて、心地よい落ち着きが感じられます。
シエスタベッドのある窓そばのリビングの南側は床を一段下げ、カーペット敷きの仕上げに。木質建材に囲まれて、心地よい落ち着きが感じられます。

リビングなどを周囲の床から一段下げる場合、小谷さんは階下の住戸を配慮して、吸音性にすぐれたウールのカーペットを敷いています。
「床を下げると、視線も下がって視界が安定します。まわりに囲まれている感覚が味わえて、まるで露天風呂に使っているような安心感と開放感が得られるんです」。

天井は熊野のヒノキ材、壁は吉野のスギ材で仕上げました。木材の節や色みを考慮して組み合わせ、高級感のある室内にコーディネート。海外住まいの長い夫婦の「終の棲家」にふさわしい、ホテルライクな空間となりました。

【ケース2】
寒さを克服して庭の空間を取り込んだ1階住戸の家

兵庫県西宮市
竣工:2026年2月
建物について:RCラーメン構造 2000年築 84㎡

壁や床、窓を含めた断熱改修を施した1階住戸の事例。冬はこのままで十分に暖かく、室内に庭の景色を取り込めます。
壁や床、窓を含めた断熱改修を施した1階住戸の事例。冬はこのままで十分に暖かく、室内に庭の景色を取り込めます。

マンションの1階にある庭付きの住戸の事例です。南向きの大きな窓があるものの、寒さや外からの視線が気になっていたため、お住まいの夫婦は目隠しシートを張って暮らしていたそう。

そこで、小谷さんは壁や床、窓を含めた断熱改修を提案。エアコン一台での全室空調を実現しました。既存の窓の内側には木製の内窓を造作して設置しています。これらの断熱改修によって、冬でも大きな掃き出し窓に防寒用のカーテンなどを併用する必要はなく、庭の景色をリビングに取り込むことが可能に。既存の窓と内窓の枠のサイズをぴったりそろえたので、視界を邪魔されず、眺めを楽しめます。

屋外にはリビングとフラットにつながるウッドデッキを新設するなど、庭へ出ていきやすい仕掛けも用意しました。

LDKから縁側、庭へと広がっていく室内。軒先には簡易のシェードも設置して、外からの視線や直射日光をカット。安心してくつろげる空間に。
LDKから縁側、庭へと広がっていく室内。軒先には簡易のシェードも設置して、外からの視線や直射日光をカット。安心してくつろげる空間に。

障子で仕切られた縁側には兵庫県高砂市名産の青竜山石を敷きました。この縁側には、外のウッドデッキとLDKとの間を緩やかにつなぐ役目もあります。

「天井や建具のラインなどの水平の線が真っ直ぐ続いていくように、高さをそろえて視界をすっきりと整えています。また天井に一定の広さでフラットな面がつくれると、他の部位で多少の凹凸があっても気にならなくなる。多少、天井高が低くても狭さよりも奥行きを感じられるようになります」。

【ケース3】
可動式の小上がりで、リノベ後の生活の変化にも備えた家

奈良県奈良市
竣工:2026年3月
建物について:RCラーメン構造 1997年築 87㎡

マンション最上階の住戸なので、天井にしっかり断熱施工を実施して、日射熱をシャットアウト。その分、天井も高く確保することができました。
マンション最上階の住戸なので、天井にしっかり断熱施工を実施して、日射熱をシャットアウト。その分、天井も高く確保することができました。

マンションの最上階の住戸の断熱リノベ事例です。暑さ、寒さの影響を受けやすい角部屋ということもあり、外気に面するすべての壁や天井に断熱材を入れ、窓にはすべて内窓を取り付けました。

小谷さんは断熱などで温熱環境を改善し、長らく住み続けられることを目指しています。そのため、入居後の住まい手の変化を見越した提案も盛り込むのだとか。たとえば、この事例の小上がり部分は可動式。分割して位置を変えることができます。
「小上がりは、元気なうちは便利に使えますが、年を重ねるとここに布団を敷いて寝たりするのがしんどくなります。可動式であれば、ベッドに替えることが容易。ライフスタイルは変わっていくので、棚や家具などは据え付けるのではなく、置くだけにしたほうが模様替えしやすくてお勧めです」。

これまで小谷さんは約130件ものマンションリノベを手掛けてきました。カビや結露に悩んでいるお客様に断熱リノベを提案して、完成後、数年して訪ねてみると、もうそんなことはすっかり忘れていきいきとしている。そんな事例をいくつも見てきたといいます。
「断熱や動線、収納などが改善されると、悩みから解放されて新しい生活を満喫できるようになります。家ってそれくらい人に対する影響力があるんですよ。ぜひ、いいリノベをして、楽しく暮らしていただきたいと願っています」。

マンション住戸の断熱に
関わる商品のご紹介

窓まわりの断熱性を高める部材、断熱性・気密性の高いマンションならではの悩みを解決する部材の双方を組み合わせることが大切。限られた空間では、機能性と美しさを両立したシステムキッチン選びもポイントに。

  • システムキッチン ザ・クラッソ

    TOTO システムキッチン
    ザ・クラッソ

    上質なクリスタルカウンターが輝き、暮らしに美しく調和。多彩な先進機能も兼ね備えた、心ときめくキッチンです。

  • 調湿・消臭建材 エアセレーノ

    DAIKEN 調湿・消臭建材
    エアセレーノ

    石目柄・抽象柄・木目柄など美しい柄表現に、調湿性能、消臭性能もプラスしつつ、軽量で安全安心な天井材を実現しました。既存クロスへの上張りも可能です。

  • ウチリモ 内窓

    YKK AP ウチリモ 内窓

    いまある窓の内側に新しい窓を取付けて二重窓に。1窓約60分の簡単施工で断熱性・気密性が高まります。

  • マドリモ 戸建用・マンション用

    YKK AP マドリモ
    戸建用・マンション用

    壁工事不要のカバー工法で、古い窓を最新の断熱窓にスピード交換。気密性が向上し防音性がアップします。

  • リフォーム相談窓口のご案内(TOTO・DAIKEN・YKK AP)

    TDY リフォーム相談窓口のご案内
    (TOTO・DAIKEN・YKK AP)

    リフォーム業者の選び方は?商品について詳しく聞きたい!そんなお悩みにお答えします。

※この記事内容は、2026年08月28日時点での情報です。ご了承ください。

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