(写真/上野 智博)
子どもが成人するまでの間、できる限り一緒に楽しく過ごしたい。
そんな思いでリフォームを検討されている人も多いのではないでしょうか。
自らも育児中で、子育て世代の住まいのリフォームも数多く手がけている
建築家の山田 悦子さん(アトリエ エツコ一級建築士事務所 主宰)に、家族の変化も想定しつつ、
親子ともに日々快適に過ごせる空間づくりについて、3つのリフォーム事例を通して解説していただきました。
プロフィール
建築家山田 悦子さん
アトリエエツコ一級建築士事務所主宰。ハイグレードなリノベーションや高級戸建て住宅をはじめ、オフィス、店舗、クリニック、家具の設計・監理を手がける。「余分な間」「残された間」を大切に、その方らしい、その家族らしい、その場所らしい住まい・空間づくりを目指している。https://a-etsuko.jp/
家族の集うリビング空間を明るく!
吹き抜けを新設して1、2階をつなげる
1つ目の事例は、住宅地に建つI邸で1994年に竣工した木造住宅。旗竿状敷地で隣家に囲まれ、日中でも1階にはほとんど日が当たらない状態でした。そこで1階のほとんどを広々としたLDK(リビング・ダイニング・キッチン)にするとともに、大型の吹き抜けを設けることに。そのおかげで家全体が開放的となり、さらに1年を通して1階に光を取り込めるようになりました。
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家族のコミュニケーションが促進される
明るいオープンリビング
リビングダイニングをはじめ、「家族の集まる場を明るく快適にすることが大事」という山田さん。新たに設けた吹き抜けを通じて1、2階がひとつながりとなり、明るさが満ちる一方、家族がどの部屋にいても気配が伝わってくるようになりました。
2階の広いホールは将来、2つの子ども部屋として使えるように間仕切壁を造設できます。
「住まいに大空間をつくると、気になるのが暑さ・寒さ、そして温度ムラです」と山田さん。床下・壁・天井の断熱材も入れ直して、窓はYKK APのアルミ樹脂複合窓に交換。その結果、断熱性は長期優良住宅相当のレベルまで向上しました。エアコンのほか1階にはガス温水式床暖房を敷設。ひとつながりの大空間でありながら、1年中、家じゅうが快適な温度に保てます。
玄関土間を2倍に広げ収納力アップ
外で遊んだ子どもを迎えるお風呂動線も充実
もう一つ、特徴的なのが玄関土間。既存の玄関は壁付けのシューズボックスしかありませんでしたが、土間には子どもの靴やサンダル、傘、屋外用おもちゃなどが散らかりがちです。そこで、今回のリフォームでは玄関土間を約2倍の広さに拡張。広げた土間のそばには洗濯機を備えたフリースペースを新たに設けました。
玄関土間の奥には子どもの三輪車やベビーカーなどもラクに収納できます。その分、玄関ドア付近はすっきりと保て、不意の来客時にも気兼ねなくお通しできます。
フリースペースは家族専用の通り道です。外で遊んで泥だらけになった子どもはフリースペースで服を脱いで洗濯機に入れ、そのまま洗面所、浴室へ直行できます。子どもの動線をリフォームに組み込むことで、親子ともストレスなく暮らせる住まいに再生しました。
家を巡る動線追加で家族の交流を促進した、
マンションリフォーム
2つ目の事例はマンションリフォームの事例です。床面積220m²という広さがありながら、リフォーム前のキッチンはクローズドタイプ。3つある個室もそれぞれ独立していて閉鎖的な印象を与える間取りでした。山田さんは個室の間の壁に新たに出入り口を設け、家族がぐるりと巡れる動線を用意。
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独立型のオープンなL字型キッチン。そばには
子どもに目が届く「ファミリーサロン」
また、キッチン横には多目的に使える約8畳のファミリーサロンを新設するなど、家族のコミュニケーションを向上させています。
独立していたキッチンは、リビングの子どもやお客様とも会話しながら料理できるように、L字型のカウンターを備えた対面式に変更しました。
また、キッチン横には小さなテーブルを造り付け、「ファミリーサロン」に。キッチンに近く、親の目が届きやすいので、家事をしながらでも子どもの勉強を見られるスタディスペースとして重宝しそう。来客時には引戸で仕切って、子どもに食事させるなど多目的に利用できます。
「子どもが成長したら親子共有のパソコンルームにするのもいいですね。ファミリーサロンに設置したデスクユニットには、パソコンの使用も想定してコンセントも取り付けました」と山田さん。
キッチンから見えるリビングの窓際にはインナーテラスを設けて、外部空間とのつながりを強調。アウトドアの開放感や心地よさを演出して、家族での寛ぎを促します。
部屋同士をつなぎ、生活動線を改善。
ぐるりと巡れて育児中の家事が効率アップ
リフォーム前は、3つの個室がそれぞれ独立しており、ビジネスホテルの部屋のように廊下側に入口が並んでいました。部屋に入ると接点がなくなり、お互いに孤立した状態になってしまいます。そこで山田さんは、隣り合う部屋との間の壁に出入り口を設置。3つの部屋をひと続きに使えるようにしました。
リフォーム前は、水まわりや他の居室に向かう際には、各部屋から一度廊下に出ないといけないので、場所によっては遠回りしたり、移動距離が長くなることもありました。リフォーム後は、それぞれの居室に複数の出入り口があるので、部屋間の移動は最短距離に。掃除や洗濯などの家事が効率よくこなせるようになっています。行き止まりのない家じゅうを巡れる動線があることで、家族がどの部屋にいてもお互いのもとに行きやすくなりそうです。
ファミリーサロンに対してすぐ横の個室は、親の目が届きやすいので子ども部屋にぴったり。また、リビングやダイニングへもすぐに出られるなど生活動線が短くて済むので、将来的には高齢となった親世帯の寝室としても利用できそうです。
主寝室にはソファを置いて夫婦だけのプライベートリビングを設ける提案も。「子どもを優先しがちですが、大人だけで過ごせる場を確保しておくと精神的にも休まりますよね」(山田さん)。
ワンルームLDKを引戸で使い分け。
書斎や子ども部屋など多目的に空間活用
3つ目の事例はメゾネットタイプのマンションで専有面積は90.96m²。1階の居室部分をワンルームにまとめて広がりを出しました。そして中ほどには半透明のアクリルをはめ込んだ引戸を設置。シンプルですが、子どもの成長に合わせてフレキシブルに使えるリフォームです。
リビングの一部を書斎から子ども部屋へ転換。
2部屋のインテリアには統一感を
1階部分の床面積は45m²と広くはありません。しかし、限られた空間ではあるものの、SOHOやテレワークでも使いたいという要望がありました。そこで山田さんが考えたのが、半透明の引戸でリビングを仕切るプラン。明るさや広がりを損なうことなく、必要なときに仕事用のスペースを独立させられます。
夫婦二人だけのうちは、仕切った奥の部屋を書斎として仕事の場に。子どもが小さいうちは間仕切を開ければ、リビングで遊ぶ子どもの様子を見ながら仕事ができます。さらに成長したら、今度は書斎を子ども部屋に転用。引戸を閉めたままでも、半透明のアクリル越しにリビング側に気配が伝わるので、子どもが孤立することがありません。
一方、引戸を開け放したときにひとつの空間として違和感のないように、床材など内装を揃えたのも効果的。インテリアに統一感があるので、空間がすっきりと広く感じられます。「仕切った際のそれぞれのスペースに、照明とそのスイッチを用意しておくのも忘れずに。個室としても使いやすいよう配慮したいですね」(山田さん)。
指はさみを配慮して引戸はゆっくりしまるタイプに。
階下への防音のため吊り戸を採用
「引戸は、ゆっくり閉まって指を挟む心配のないタイプを採用する」というのが山田さんの方針。引戸にはアクリル板を採用するほか、室内のガラスには飛散防止のフィルムを貼ることもあります。子どもは気持ちが高まると走り出したり、モノを投げたりと想定外の行動を取ることも。安全への配慮は欠かせません。
また、引戸は上から吊る方式に。床にレールがあると、子どもが頻繁に開け閉めするなどしてマンションの階下に振動音が響くリスクがあるからです。この方式なら、大きい引戸でも軽く開閉することができるというメリットも。「床にレールがないので、ごみやほこりが溜まる心配がありません。清掃面からも吊り戸はおすすめです」(山田さん)。
子育てに適したリフォームとは
子どもが生まれ成人するまで一緒に暮らすとき、彼らの成長に合わせて、住宅の空間に求められる要件は刻々と変化していきます。山田さんは、5年先、10年先の家族の変化を見越し、それに対応できる柔軟な可変性を設計に盛り込んでいます。上記の3つの事例では、既存の限られた住空間をベースに、家族の居場所や生活動線が整えられ、親子ともに心地よく家族として触れ合いながら過ごせる住まいにリフォームされています。
TDYのコラボレーションショールームでは、TOTOの水まわり、DAIKENのフローリング・内装ドア、YKK APの窓・玄関ドアなど、3社の商品をチェックできます。またTOTO、DAIKEN、YKK APがご提案している「十人十家(じゅうにんといえ)」でも、育児や家事を楽にするリフォーム空間をご覧いただけますので、ぜひご活用ください。
子育て空間づくりに役立つ
商品ラインナップ
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TOTO TOTOのユニバーサル
デザインつくるって、人を思うこと。さまざまな人の使いやすさを追求する活動より、「子どもと暮らす住まい」をご紹介します。
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TOTO 住宅用水栓金具
毎日使うものだから、使い勝手にこだわる水栓金具。様々な商品をご用意しています。
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YKK AP エピソードNEO
断熱性・防露性に優れたアルミ樹脂複合窓。安全性や使いやすさが評価され、第11回キッズデザイン賞(※)を受賞しています。
※ キッズデザイン賞は、子どもや子どもの産み育てに配慮したすべての製品・空間・サービス・活動・研究を対象とする顕彰制度です。 -
YKK AP アルミインテリア建材
スクリーンパーティション様々な間取りに対応可能な多彩なバリエーションで、シーンに応じて空間を「仕切る」「つなぐ」間仕切です。
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YKK AP インテリアドアシリーズ
ファミット空間に開放感を与える「ガラスデザイン」と、壁と同化し自由なデザインを実現する「クロスデザイン」が、新しいインテリアをつくり出します。
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DAIKEN インテリア畳
ここち和座 置き敷きタイプフローリングの上に置くだけでくつろぎのスペースを簡単に作れます。自由なレイアウトで個性的なインテリアを演出してくれます。
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DAIKEN スタイリッシュファニチャー
ミセル子どもが安心して勉強ができ、自分からすすんで片づけをする。学びと暮らしの成長を見守り、サポートできる収納です。
※この記事内容は、2020年9月28日時点での情報です。ご了承ください。