(写真/冒頭以外、グランデータ株式会社)
東北や関東を中心に大きな被害をもたらした東日本大震災から今年(2021年)で10年が経過しました。
地震大国である日本においては、いつどこで起こるかわからない地震への備えが欠かせません。
そこで今回は、耐震改修で数多くの実績を持つグランデータ株式会社の社長、橋本 晋二さんに
わが家の耐震性を高めるためのポイントをお聞きしました。
水まわりなど傷みの気になる場所のリフォームの際に同時に実施できれば、
効率よく「地震に強い家」にすることも可能です。
プロフィール
グランデータ株式会社
代表取締役 橋本 晋二さん
築浅の家でも耐震リフォームが必要なことも。
気になる場合は自治体の耐震相談の窓口に
まだ復興の途中にある東日本大震災から10年。この10年の間でも、震度7を記録した熊本地震(2016年)、北海道胆振東部地震(2018年)など、日本では大きな地震が発生しています。家族の安全のためにも、わが家の耐震性は十分に考慮しておきたいものです。
そんな日本の家の耐震性の基準となるのが建築基準法です。宮城県沖地震(1978年)の被害を教訓に、1981年に建築基準法の耐震設計基準が大幅に改正されました。
「でも81年以降の建物なら安心かというとそうでもないんです」と橋本さん。その後の阪神大震災(95年)の被害を考慮して2000年にも建築基準法が改正され、揺れで柱が土台から抜けないように基礎に留めるホールダウン金物などの接合金物の義務化、耐力壁(建物の構造を支える筋交いや構造用合板が入った壁)のバランスのよい配置などが基準に加えられました。
「当社で耐震診断した家のうち、81年から2000年までの間に建てられた建物の約7割が、現行の耐震基準を満たしておらず、耐震リフォームの必要ありと診断されました。つまり、2000年以前に建てられた家には注意が必要です。気になる場合は、まず自治体の耐震担当の窓口に相談を」と橋本さん。
また熊本地震では、2000年以降に建てられた家であっても1階部分が潰れてしまう例が多発。被災地での調査に協力した橋本さんは、「1階に設けた広いリビングが地震力※1に耐え切れなかった」という共通点に気が付きました。
「広い空間を支えるために太い梁※2を渡しているのはいいのですが、その梁を支える柱が耐力壁などで十分に補強されていない。1階に広いリビングがあるような家では1階と2階で大きく間取りが違うため、柱や耐力壁の配置が上下階で食い違っており、建物が一体としての強さを発揮できません。計算上は基準をクリアしていても、実際の地震の揺れを想定していない設計になりがちなんですね」。
※1:地震によって建物に働く力(加速度×建物の重さ)のことをいう
※2:屋根や上階の床などを支える、横方向に渡る構造部材
そのほか現地調査では、構造材同士をつなぎ止めて建物の構造を強化するはずの金物も、しっかりと留め付けられていないために破壊されてしまうという例も数多く見られたそうです。「これは施工する側の知識不足のようですね・・・。せっかく耐震の技術が進歩していても、施工する側が勉強していないとこうなってしまいます」。
プロが耐震性を判断するときの
7つのチェックポイント
近年の震災の様子はマスメディアやインターネットを通じて詳細に報道され、同時に、広く一般にも家の耐震性能の必要性が認識されるようになってきました。橋本さんへの依頼も、最近は「リフォームのついでに耐震診断をして必要な補強をしてほしい」というケースが増えてきているそうです。「水まわりや内装、外装のリフォームでは、壁や床をはがすので柱や梁などの構造があらわになりますから、その機会を生かして耐震改修すれば一石二鳥。賢いお施主様が増えている印象です」と橋本さん。
耐震改修を行う場合、まず既存家屋の調査を行い、家を支える主要な箇所の老朽度や問題点をチェック。その結果を踏まえて補強計画を作成し、施主とリフォームの内容や方法、費用などを検討して設計と見積もりをまとめ、契約を交わした上で施工に着手します。
特に下記の表のような家は、耐震性に注意が必要です。
耐震診断の必要性が高い建物の例
- ・1981年以前の建物
- <理由>
耐力壁や筋交いが足りない可能性が高い
基礎のコンクリートに鉄筋が入っていない場合がある - ・2000年以前の建物
- <理由>
柱や筋交いに耐震金物がない可能性が高い
壁の配置バランスがチェックされていない恐れがある - ・増改築をしたことのある建物
- <理由>
構造上必要な壁、柱を抜いてしまった恐れがある
増改築後の強度を保つ耐力壁の量が足りないことがある - ・保管している設計図面と間取りが違う建物
- <理由>
役所の検査を受けていないので施工の不備が未チェック
本来許容されない規模の違法建築の恐れがある
また橋本さんの場合、これまでの耐震改修の経験をもとに、既存家屋では、主に以下の7つの点について特に気を付けて調査しているそうです。
- ①地盤
- 家を支える地盤が軟弱なら、耐震補強計画にもその条件を反映させる必要がある。敷地の海抜や周囲の環境、高低差などを確認。近隣に川や沼、水田があったり、低地・窪地である場合、軟弱地盤の可能性がある。自治体で建物近隣の地盤調査のデータを調べることも
- ②基礎
- 建物と地盤をつなぐ基礎の仕様や劣化状態を調べる。81年以前の建物だと基礎コンクリートに鉄筋が無い場合も
- ③耐力壁や筋交い
- 家の骨組みを支える耐力壁や筋交いの配置のバランス、劣化状況、施工の不具合などを確認
- ④柱や梁のつなぎ方
- 柱や梁、土台などの構造材同士の接合に不具合や劣化などの問題がないか、接合金物が正しく留め付けられているかをチェック
- ⑤屋根や2階の床構造
- 屋根や2階の床組みも家を支える重要な構造の一部。施工の不具合や劣化の状況を確認する
- ⑥シロアリ被害や雨漏り
- 小屋裏や床下をのぞいて、構造の強度に影響を及ぼすようなシロアリ被害や雨漏りなどの発生状況をチェック
- ⑦間取り
- 間取りが以前のリフォームで変わっていないか、1階に大きすぎる部屋があれば建物に十分な強度があるかなどを図面等で確認。上下階の柱と壁の配置が一致しているかどうかは重要なポイント
「どのように住んできたか、どのように家の手入れをしてきたかも重要です。それを確認するだけでも家の傷み具合の推測に役立ちます」と橋本さん。新築時に十分な耐震性がある建物でも、年月を経て構造が劣化してしまうこともありえます。
「近年は建材の精度が向上して住宅の気密性が高まっています。そのため雨漏りの水分が小屋裏にこもったり、壁の内側に結露が発生したりして、湿気を好むシロアリやカビなどが構造材をボロボロにしてしまう例も増えてきました。築浅の住宅でも油断できません。小屋裏や床下もしっかり調査する必要があります」。
建物の劣化の例
構造躯体の耐震リフォームの例
耐震リフォームの依頼先を選ぶときに
気を付けておきたいこと
「当社は耐震診断から補強計画、リフォーム設計、見積もり、施工までトータルに手がけています」と橋本さん。耐震リフォームの経験が少ない住宅会社や工務店、設計事務所から依頼を受けることもあるそうです。
地震の性質や被災住宅の状況、構造が揺れに耐える仕組み、工事のノウハウ・・・耐震リフォームには多分野にわたる専門知識と経験が求められます。
依頼先を選ぶときには、下記のような点に留意するとよいでしょう。
- ・耐震診断の結果として「耐震診断計算書」などを含む詳細な調査報告書を提出する会社を選ぶこと。
- ・リフォームのプランについて、複数の選択肢を提示できる会社を優先して選ぶこと。
- ・契約の判断は、きちんとした調査報告書と耐震リフォームのプランの説明を受けてから。
- ・家屋調査や耐震診断の後、その場で契約を急かしたり、必要以上に危険性を強調する会社は避けること。
確かな見識と経験のある会社なら、きちんとしたプランをつくるために、まず家屋の事前調査や耐震診断を詳細に実施。現状の建物の弱い箇所を洗い出し、補強方法を検討しようとするものです。
耐震リフォームのプランは、橋本さんの場合、家全体がバランスよく強くなるように提案するといいます。劣化の激しい部分だけを強化すると、地震力がそのほかの部分に偏ってしまい、かえって危険なこともあるためです。
「一部屋だけをシェルターのように強化しても、地震が起きたとき、そこにいるとは限りません。家全体で工事できない場合でも、リビングやダイニングの周辺など、なるべく広い範囲で在宅時にいるエリアを耐震化することをおすすめします」。
そして、何よりも大切なのは、わが家の耐震性について不安な気持ちでいる住まい手に寄り添う姿勢だと考えています。
「耐震改修はきちっとやって当たり前。どこをどのように改善したいか、リフォーム全体の要望をしっかり聞き取ったうえで提案するプランをまとめ、そのメリットとデメリット、コストについて根拠も含めて明確に説明することを心がけています」。
わが家の安全を託す相手ですから、遠慮なく話し合える相性の良さも重要です。信頼できる会社を妥協せずに探すようにしましょう。
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※この記事内容は、2021年3月10日時点での情報です。ご了承ください。