2022年度も多数の作品をご応募いただき、誠にありがとうございました。
宇野悠里先生、立石史博編集長、廣部剛司先生を審査員にお迎えし、去る12月7日、厳正なる審査を実施し各賞を決定いたしました。
審査を終えられた皆さんに、今年度の応募作品の傾向や評価のポイントを伺いました。
――今年度の応募作品について全体的な印象はいかがでしたか?
宇野:環境性能を重視した作品が数多く目に留まりました。断熱性能をグラフで可視化するなど、説得力のある作品が増えていると感じました。
廣部:断熱改修は特別なことではなくなりましたね。断熱材やサッシの性能も向上し、開口を広くとったり、吹き抜けにしたり、以前より自由にプランニングできるようになりました。温熱環境の改善を前提にしながら空間をどうデザインするのか、それがリモデルの面白いところです。
立石:ご実家を受け継ぐことをきっかけとしたリモデルのケースも多く見られました。最近は住宅ストックの問題もよく話題になりますが、ストックを活用するという意識が根付いてきているのではないでしょうか。
廣部:コロナ禍でリモートワークが定着し、それを機に職場から離れた実家に拠点を移すという方が増えているという面もあるように思います。
宇野:ワークスペースの設計も昨年と比べると一歩進んで、他の空間とのつながりやデザイン性も重視されてきています。住まいの中に自然に取り入れられていますね。
立石:審査を担当するのは3年目ですが、当初はコロナ対策の新しい生活様式のため、やむを得ず選択したリモデルも見られました。しかし今ではそれが一般化し、制約がある中でもお施主様の好きなものを突き詰めていくような作品も多く見られて、それが喜ばしく感じました。
宇野:お施主様の要望をただカタチにするのではなく、そのオーダーを受け止めてオリジナリティーのあるプランに落とし込めているものが良い作品になっていると思います。
――リモデル実例シートの完成度はいかがでしょうか。
立石:とても見やすくなりましたね。皆さんSNSなどで、自ら情報発信する機会も増えているので、伝えることの重要性を理解されているのではないでしょうか。
――今後に向けてのアドバイスなどお願いいたします。
立石:伝えたいポイントをまとめたら、一度俯瞰してみてください。例えば、照明のこだわりがポイントだとしても、家事動線の工夫に興味のある方のほうが多いかもしれません。自分がアピールしたいポイントとは違うところにフォーカスしたほうがより多くの方に魅力を感じていただける場合もあるので、客観的に考えることが大切です。
廣部:ポイントを絞るとともに、総合的に情報をきちんと伝えることも重要です。特に戸建の場合、外観の写真が掲載されていると全体像が把握できます。
宇野:どのような立地なのか、方位はどうなのか、全容を理解するには外からの視点は欠かせないところです。
廣部:一方、採用した製品の紹介になってしまっている実例シートもあり、非常にもったいないと感じます。どのような製品を提案したかということも重要ですが、空間にどう取り入れたのか、その背景にある生活を実例シートに表現していただきたいですね。
立石:紙面は限られているので、伝えたいポイントを見極めてプレゼンの機会を無駄にしないよう心がけてください。
全国最優秀賞/TDY総合リモデル賞 入賞のポイント
●全国最優秀賞
奥様の祖父母が暮らしていた古民家をリモデル。モダンな母屋と古民家の趣を生かした蔵、各空間のデザインの対比が目を引きます。ご主人が外国人で日本語に堪能ではないということもあり、提案時に使用した模型やパースを実例シートに盛り込んだ、プレゼンテーション力も際立つ作品。
●TDY総合リモデル賞
マンションのワンフロアを完全分離型の二世帯住宅にするため、中央に水まわりを集約することで導き出したレイアウトが見事。縁側のようなインナーテラスと畳スペースの関係性など、両世帯をつなぐアイデアも秀逸です。
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宇野悠里 先生 建築家。㈱仲建築設計スタジオ共同代表。
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立石 史博 編集長 住宅雑誌「住まいの設計」(扶桑社)編集長。ふるさとニュースマガジン「カラふる」(扶桑社)編集長。
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廣部剛司 先生 建築家。廣部剛司建築研究所 代表。日本大学 理工学部 建築学科講師。