引き続きコロナ禍の影響を受けながらも、2021年度も多数の力作をご応募いただき、誠にありがとうございました。今回は立石史博編集長、廣部剛司先生に加え、新しく宇野悠里先生を審査員にお迎えし、去る12月3日に厳正なる審査を実施。審査を終えられた皆さんにお話を伺いました。
今の世の中の問題にリモデルで対応
――今年もレベルの高い作品が多数寄せられました。審査中、長引くコロナ禍の影響がリモデルにより濃く表れているというお話もありましたが、いかがでしょうか?
廣部:昨年はまだ先行き不透明だったので、コロナ対策を意識した作品には一時しのぎの感がありました。しかし今年は、在宅勤務のためのワークスペースが当たり前のように空間に取り入れられている作品が多く見られましたね。
立石:家で過ごす時間が長くなり、住まいや暮らしへの関心が今まで以上に高まっています。ライフスタイルやインテリアへのこだわりの強い人も増え、そういった方々の要望にもうまく対応しているように感じました。
宇野:私は今回初めて審査に参加しましたが、コロナ対策や暮らしへの関心の高まりなど、応募作品の中に世相が表れていることに驚きました。今、お施主様が求めていることに対して、リモデルでも本当にさまざまな取り組みがなされているということがわかって、設計に携わる者として心強さを感じました。
廣部:減築している作品も目立ったように思います。お子さんが巣立つなど変化した家族構成に合わせて、ちょうどよい住まいの広さが考えられていますよね。空間を小さくした分、質を上げて居心地を良くすることに注力されていて、とても感心しました。
立石:既存のものを再利用するという、新築にはないリモデルのメリットも改めて感じました。特に古民家のような歴史ある住まいは、不便な暮らしは変えたいけれど再生できるものは活用して住み継ぎたいという方が多いように感じます。住まいの今の悩みを解決するだけでなく、家の将来も見据えた提案ができているのは素晴らしいですね。
宇野:たくさんの応募作品を拝見しましたが、お施主様のお悩みや大事にしていることなどをしっかりヒアリングできている会社は、満足度の高い空間づくりができているということがよくわかりました。デザインや設計によってこんなに暮らしが変わるということが、コンテストを通して発信できればと思いますね。
――実例シートの見せ方については、どのように感じられましたか?
立石:プレゼンテーション力は向上しているように感じますが、写真や図面は興味深いのに、情報不足でリモデルの内容が伝わってこないシートが見られるのが残念ですね。文章表現にも力を入れていただきたいです。まずは伝えたい情報をすべて書き出してみましょう。そのうえで、優先順位を考えてメリハリをつけることが大切です。何より重要なのは、シートから熱意が感じ取れることだと思います。
全国最優秀賞/TDY総合リモデル賞 入賞のポイント
全国最優秀賞
60㎡弱のマンションをご家族3人の暮らしに合わせてリモデルした作品。LDKと2つの寝室の配置を入れ替えるなど、間取りを大胆に変更した設計力、造作家具などのデザイン力が秀逸。お酒が好きなお施主様の理想をうまくプランに盛り込み、さらに作品タイトルとしてわかりやすく表現した点も素晴らしく、総合力で全国最優秀賞にふさわしい作品です。
TDY総合リモデル賞
今回多く見られた古民家リモデルの作品の中でも、欄間やふすま、書院、式台などを随所に再利用し、古民家をよみがえらせた力量とセンスが抜きんでていました。もとの田の字型の間取りをベースにしながら、水まわりへの動線などを暮らしやすく一変させたレイアウトもよく考えられています。
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宇野 悠里 先生 建築家。㈱仲建築設計スタジオ共同代表。
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立石 史博 編集長 住宅雑誌「住まいの設計」( 扶桑社)編集長。ふるさとニュースマガジン「カラふる」(扶桑社)編集長。
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廣部 剛司 先生 建築家。廣部剛司建築研究所 代表。日本大学 理工学部 建築学科講師。