2010年度も皆様から多数の応募をいただき、誠にありがとうございました。
去る2010年11月30日、12月1日に厳正なる本審査を行い、栄えある全国最優秀賞作品、および各部門・テーマの上位入賞作品を決定いたしました。審査員の講評とともにご紹介いたします。
今回の応募総数は約3400作品。過去最高となった前回に匹敵する数の応募があり、しかも、審査員お二人が口を揃えて「全般的に、施工内容も事例シートの作り方も年々レベルアップしている」と話され、見応えのある作品が多かったのが特徴的でした。これは、各社がお客様に真に喜んでいただけるリモデルに注力していること、さらに、過去の上位入賞作品を検証し、優れた点を吸収しつつ、独自の提案力・施工力に磨きをかけたことの現れと言えます。「完成度の高い作品は熱意がシートから伝わってきましたし、突出して優れた作品が目にとまるというより、各社の力が拮抗していて上位作品を選ぶのが難しかった」と語るのは今井淳子先生。竜口隆三先生も「前回、私たちが提唱した“暮らし方が伝わってくるような写真や図面の提示”にこだわっていたり、説明文も工夫するなど、充実した内容のシートが多かったのが印象的」と話されていました。
また、ハイレベルな激戦の中、「古い民家を再生し和の空間づくりを行った作品」と、「若々しく明るい空間づくりを行った作品」が目を引いたのも、今回の特徴のひとつ。それを象徴しているのが、全国最優秀賞に前者と後者のトップというべき作品が選ばれたこと。甲乙つけがたく、初の2作品同時受賞という結果になりました。「特に、和空間は受賞候補を絞り込んでいく中で数多く残りました。古民家の良いところは残しつつ、現代風にアレンジするリモデルは意義がありますし、力がないと難しいことなので、見栄えのする作品が多かったのでしょう。ただ、古民家が多く残る地域から同じ傾向の作品が多く寄せられた結果とも言えるので、都会の小さな住まいのリモデルなども力作が増えるとうれしいですね」と、今井先生からの提言もありました。
さらに、バリアフリーに配慮した作品や、親子が同居するためのリモデル作品が増加。高齢化社会を反映してますます重要なテーマとなっていくことが予想されます。ここでお二人が口を揃えるのは、「50歳代から対策を考えるなど、早めのリモデルが理想」ということ。「病室のような雰囲気のリモデルではなく、センスや趣味を生かしたおしゃれな空間づくりが行われるようになったのは良いことですが、安全対策も万全に。バリアフリーや手すりばかりに気をとられず、浴室やトイレの温度差をなくす工夫も重要」(今井先生)。「バリアフリーというと、車いす生活に適応する仕様が重要視される傾向がありますが、実際に車いすを室内でも使うという人は少ない。介護者にも配慮しながら、さまざまなケースを考案してほしい」(竜口先生)。
お客様のご要望を実現するだけでなく、プラスアルファの提案で大きな満足をお客様に感じていただくこともリモデルの重要なファクター。「上質な居住空間を目指すことで、現代社会の住まいは外に対して閉鎖的になりがち。今回の全国最優秀賞作品にもありますが、近隣とのコミュニケーションも考慮したリモデルを提案していくのも一案」という提唱も。そんな今後の課題も踏まえて、さらに提案力・施工力を磨き、お客様の「スマイル」を実現してください。
今井淳子先生
一級建築士、(株)あい設計主宰
横浜市生まれ。工学院大学建築学科卒。「住まいの町医者」を目指して30年。建て主の想いを一緒に整理し、形にする。住まいを創るのは家族であるとの考えから、共働き、育児、同居、介護、趣味など、生活全般をテーマとする。著書に『定年後が楽しくなるリフォーム』(亜紀書房)などがある。
竜口隆三先生
西日本工業大学デザイン学部教授・博士(人間環境デザイン学)。東陶機器㈱(現TOTO㈱)にて長年水まわり設備機器・福祉機器を中心としたバリアフリー化の研究・開発業務に従事し、2002年同社内に設立されたUD(ユニバーサルデザイン)研究所の初代所長に就任。現在は西日本工業大学で教鞭を執るほか、国内外でUDを中心とした講演活動も精力的にこなす。