(写真/特記以外、GA設計事務所)
わが家は安心してくつろげる場所であってほしい。
そんな要望に対して20年以上にわたって応えてきたのが、建築家の玉木 直人さんです。
リフォームの際に、どこに着目して、どのような工夫をすれば不審者の侵入を防げるのか、
玉木さんがこれまで実践してきた設計術を明かしていただきました。
そのポイントは建物と外構を一体に考えること。実際に手掛けた事例をもとに解説いただきます。
プロフィール
株式会社GA設計事務所 代表
玉木 直人(たまき なおと)さん
1999年、GA設計事務所設立。東海地方を中心に新築、リフォームの設計を
幅広く手がける。
株式会社GA設計事務所 https://gap-office39.com/
「外に開く庭」と
「内に開く庭」を配して
侵入しづらいと思わせる
これまで大小さまざまな住宅を手がけてきた玉木さん。「とはいえ、どのような家でも防犯の基本は一緒」と語ります。それは、まず敷地内に「外に開く庭」と「内に開く庭」という2種類のスペースを設けること。どのように防犯に役立つのか、説明いただきます。
敷地周辺の環境を考慮して
防犯を考える
「私は住宅を設計する際、必ず敷地の内部のことだけでなく、周辺の環境についても考慮します。 住宅密集地なのか、田園地帯にぽつんと建つ一軒家なのか、立地状況によって求められる条件が変わってくるからです」と玉木さん(以降、発言はすべて玉木さん)。
それを踏まえたうえで、敷地内には「外に開いた庭」と「内に開いた庭」の2種類を配置すると言います。 「建物は道路からある程度距離を取って『前庭』を設けるとともに、道路に面した部分にはなるべく塀は立てないように計画しています。 オープンにして植栽なども配して、歩道の延長のような空間にします。大きな車が走ってきたら、歩行者がさっと避難できるような場所でもあります」。
玉木さんがそのようにする主な理由は街並みのため。道路に面して高い塀を立てて拒絶するような雰囲気をつくってしまうと、 敷地の「内」と「外」がきっちり分断されて街並みも殺伐としがちに。逆に、前庭が道路に向けてオープンになっていると、 不審者が玄関まで来ても外から丸見えなので、通行人やご近所の方の方にも気にしてもらいやすくなります。
ただし、前庭を開放的にする代わりに、建物の道路側にはあまり窓は設けず、内部の様子はうかがえないようにします。 門扉は見た目にも鋭利なデザインを選んで玄関近くに設け、玄関ドアはスチールの部材などを使った堅固なイメージのものに。 不審者に「この家は警戒しているな」と思わせるためです。
「庭は外に向けて開く一方、建物側ではしっかりとガードすることが大事。 不審者がアクセスするとしたら前面道路からが多いはず。最近の玄関ドアはピッキングの不可能な電子錠など、 防犯機能の高い商品も増えているので、採用を検討しては」。
リビングに面した庭は
見通しよく整える
一方、「内に開いた庭」は、その名の通り、建物で囲まれ、室内から続くように設けられた中庭部分のこと。 中庭に面した部屋には大きな窓を設けて庭を眺められるようにします。庭木も整理して、万一、 不審者が侵入しても隠れる場所がないように見通しよくします。
「庭にテラスを設けたり、夜に庭をライトアップしたりするのもいいですね。 庭を居室の延長として使えるようにしておくと、侵入者はいつ住人が来るか気が気でなく、 "人の目"が気になりますから、長居しようとは思わないでしょう」。
また、敷地外からの侵入対策のため、「内に開いた庭」付近の塀は簡単に乗り越えられない高さ2mほどにしています。 「私は、上端がとがったフェンスなどを選んで、侵入しにくくしています」と玉木さん。
「防犯だけを最優先するなら、侵入する経路となる窓やドアを最小限にすればいいのでしょうけども、 それではあまりにも殺風景です。それよりは、住人や訪れたお客様がよく目にするような部分には開放的で緑豊かな庭などをつくり、 目の届かない部分は徹底して閉め切るというメリハリが必要ですね」。
防犯カメラや面格子など設備や建材も
うまく活用して
防犯性アップ
玉木さんの防犯メソッドでは、設計面での工夫のほか、 防犯カメラや面格子など設備や建材も効果的に取り入れています。 ちょっとした配慮がわが家の安心感を高めます。
玄関先や勝手口周辺は
重点的に対策
玉木さんは設計時に防犯面を検討する際、「自分が侵入犯だったらどこから入るだろうか」と自問自答してみるそうです。
「一般的な腰高窓は大人の腰の高さほどにあるうえ、サイズが小さく入りにくいケースが多いですね。
侵入にかける時間をなるべく短く、そして逃げやすくするなら、掃き出し窓や玄関ドア、勝手口を狙うのではないでしょうか」。
そこで掃き出し窓には防犯合わせガラス(2枚の板ガラスの間に合成樹脂の中間膜をはさみ圧着したガラス)を選んだり、 防犯フィルムを張ったりして、窓を破られないようにしています。さらに玄関先や勝手口には防犯カメラを設置。 そのほか、門から玄関までのアプローチや庭には人感センサー付きの照明を取り付け、人が近づいたら点灯するようにします。
また、周辺環境などによっては建物に駐車スペースを組み込むインナーガレージを採用し、 前面にシャッターを取り付けて車の有無をわからなくすることも。 「住人がいるのか、いないのか、外からは判別できないほうが無難です。明らかに留守だとわかれば狙われやすいですから」。
人目につきにくい窓は面格子や
防犯シャッターで守る
家の裏手にある勝手口や浴室、脱衣室などは人目につきにくく、侵入経路として狙われがちです。 「庭などの景色を楽しむ目的のない窓には、面格子(窓などの開口部に設置する格子)を取り付けるとよいでしょう。 外から外されないように、室内側に留め付けるタイプの商品もあり、私も度々採用しています」。
勝手口ドアの中には通風及び採光窓を持ち、2か所に錠を備えたタイプがあります。これには、
ドアを閉めたまま窓の部分から外の気配が把握できるほか、2か所とも鍵をかけていると侵入にも時間がかかるというメリットが。
「家のまわりに砂利を敷くのもいいですね。歩くと音がするので侵入者は嫌がるはずです」。
また最近では特に、人目につきにくい場所にある1階の窓に、防犯シャッターを取り付けるケースが増えているそうです。 「私が設計する場合、寝室にはたいてい採用しています。設定した時間になると自動的に開閉するタイマー機能付きのシャッターもあります。 これは、帰宅の時間が遅いご家庭には適していますね」。
建物と外構は一体のものとして
設計すると隙がなくなる
玉木さんにとって建物と外構の設計は一体のもの。 どのようなお施主様がどう暮らすか、それによって、どこを閉じてどこまで開くか、という建物と外構のデザインのバランスが変わってきます。
エクステリアや窓まわりの商品は今も進化中
玉木さんが設計する住宅の場合、そのほとんどで外構や植栽についても建物と同様に構想を巡らせます。 建物と外構はひと続きであり、敷地全体でデザインする、という考えだからです。
「ここは大きな窓を付けたいから、しっかりと外部から隠れるような塀が必要、 といった具合に建物と外構は補い合う関係にあります。その方向性が一致していないと、 ちぐはぐになって無防備な場所、"隙"が生まれてしまうと思います」。
残念ながら、旧来の一般的な新築では建物を先に完成させ、その後に門扉や庭を整えていくケースが多く、 双方の防犯計画はバラバラです。リフォームの際にこそ、玉木さんのアドバイスを生かし、 建物の外観や庭を総合的に見直して防犯性を高めたいものですね。
「いま、門扉やフェンスなどエクステリアや窓まわりの商品が日進月歩の勢いで進化しています。 意匠のバリエーションや機能も豊富になっているので、これから建物と外構の融合はより進みやすくなるのではないでしょうか」
TDYのコラボレーションショールームでは、TOTOの水まわり商品、DAIKENの建材、YKK APの窓まわり商品など、防犯性を意識したリフォームに活用できる商品をご覧いただけます。
またTOTO、DAIKEN、YKK APがご提案している「十人十家(じゅうにんといえ)」でも、それらの商品を取り入れたさまざまなリフォーム空間をご覧いただけますので、ぜひご活用ください。
防犯リフォームに
おすすめの商品のご紹介
それぞれの家の防犯の課題に合わせて、解決につながる商品を選びましょう。
デザイン性を兼ね備え、生活する場を彩る商品がそろっています。
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YKK AP 高強度面格子
FLA細部まで防犯性に配慮。ワンウェイねじやブラケットカバーなど防犯のための工夫を施したアルミ製面格子です。
後付タイプなのでどのような窓にも対応でき、リフォームにも便利です。 -
YKK AP ルシアス フェンス
住まいの魅力を最大限に引き立てる上質で美しいデザイン。洋風から和風、モダンからクラシックまで幅広い住宅におすすめのデザインです。
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YKK AP ルシアス カーポート
建物と外構が美しく調和し、ワンランク上のラグジュアリー感を創出します。ルシアス シリーズの外構商品とトータルコーディネイトが可能です。
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YKK AP エクスティアラ
アーチ上質な風格をたたえたエントランスアーチ。アルミ乾式構造フレームにより美しい納まりと工期の短縮を実現します。
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YKK AP リウッドデッキ
200 EGリウッド(再生木)を使用した安心・長持ちのデッキ材です。耐候性などの優れた機能はそのままに、高級感のある美しく繊細な木目が、上質なリラックス空間を演出します。
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TOTO 戸建て住宅向け
バスルーム
シンラリラックスを追求した新機能を搭載しています。日常を快適にするTOTOのこだわりをバスルームに実現しました。
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TOTO 単体浴槽
ラフィア軽量で強度も高いFRP(ガラス繊維強化プラスティック)素材のベーシックデザインのバスタブです。シンプルな白の浴槽は、浴室に大きな窓を設けてもコーディネートを楽しめます。
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TDY オンラインリフォーム
相談センターご自宅にいながら、お持ちのスマホ・パソコン・タブレットで、簡単にリフォームについてご相談いただけます。
※この記事内容は、2023年7月26日時点での情報です。ご了承ください。