2015年度は前年を上回る多数の応募をいただき、誠にありがとうございました。
去る11月17日・18日の2日間にわたって厳正に審査を行い、全国最優秀賞作品、
および各部門の上位入賞作品を決定いたしました。審査員の講評とともに発表いたします。
センスの良さと独自のアイデアに注目
今回の応募総数は前年を上回る約3200点。回を重ねるごとに力作が増えています。「ここ数年、全体的な作品のレベルが底上げされていますが、今回はその傾向が顕著に感じられました。より良いシート作りを目指し、独自の勉強会を行う店会も増えてきているのでその成果の現れでしょう。努力や熱意が伝わってくる作品が非常に多くなり、大変喜ばしいことですね」と話されるのは審査員の竜口隆三先生。西岡麻里子先生も「昨年度の全国最優秀賞や上位入賞作品の好影響が感じられました。それらの作品のプランニングやシート作りの優れた点を各社が研究・吸収し、自社作品に反映させながらオリジナリティも追求することによって、全体的なレベルアップが図られたように思います」と話されます。
このように、シート作りにおけるプレゼンテーション力はますます向上していますが、昨年同様、やや内容過多のシートも散見されました。「説明文や写真の点数が多すぎたり、メリハリに欠ける構成では、アピールポイントがぼやけてしまうのでちょっともったいない。内容を整理して簡潔にまとめる工夫も大事です。『設計コンセプト』の欄などに、アピールしたいポイントを絞って的確な言葉で表現すると伝わりやすいです」と、お二人は提唱されます。
プランニングにおいては、インテリアや色使いにまで気を配るトータルコーディネートの重要性がかなり浸透し、センスの良い空間づくりや独自のアイデアが光る作品が多く見られました。「特に目立っていたのは壁の工夫。ニッチはすでに定番化していますが、ほかにもアールにくり抜いた壁、黒板として使える壁、モザイクタイルのあしらいなど、遊び心のある魅力的なデザインが目を引きました」と竜口先生。西岡先生は「商品を単に使
うのではなく、ひと手間かけた工夫に目が留まりました。例えば、造作収納ラックの前面に雑誌を飾る仕掛けをプラスするとか、インテリアをよりおしゃれに演出するアイデアを評価しました」とのこと。
高いプランニング力と施工力、巧みなシート作りが印象的で、「総合力でナンバーワン」と、お二人が評価されたのが今回の全国最優秀賞作品。梁を活かした吹き抜けのダイナミックな空間、白と黒のバランスの良さ、薪ストーブなど、空間とインテリアコーディネートの調和が見事です。
「清々しい心地良さが感じられ、このお宅におじゃましてみたいという気にさせられました。昔の住まいの面影や思い出を残せるリモデルのメリットも、きちんとプランニングされています。シートもポイントを押さえたうまい構成。お施主様の『リモデルをして良かった』という満足感がよく表れています」と、お二人は絶賛されていました。
「バス・洗面所」「まちなかトイレ」の力作を!
どの部門も力作が揃いましたが、比べるとやや層が薄い印象なのが「バス・洗面所」と「まちなかトイレ」の部門です。「『バス・洗面所』は、どうしても商品の交換という印象の作品になりがち。バリアフリーにも気をつけたい部位ですので、手すりやヒートショック対策など、積極的に取り組んでいただきたいですね」と竜口先生。また、西岡先生は「洗面所に造作で収納を設置するなど、ちょっとしたアイデアを盛り込むと差がつくと思います。『まちなかトイレ』は、店舗や宿泊施設などの作品なので限られてしまうかもしれませんが、チャレンジをお待ちしています」と話されました。今後もお客様に喜ばれるリモデル提案とシート作りに邁進してください。
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西岡 麻里子 先生 一級建築士。アトリエ楽 一級建築士事務所主宰。埼玉県生まれ。日本女子大学住居学科卒。どこの家もふだんは散らかっているし、家族の会話は不足がち。だからこそ楽しい暮らしができる家づくりを日々模索している。著書に、吉田桂二氏らとの共著「暮らしから描くキッチンと収納の作り方」(彰国社)、女性建築技術者の会名義での「家づくりのバイブル」(三省堂)など。
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竜口 隆三 先生 西日本工業大学デザイン学部教授・博士(人間環境デザイン学)。東陶機器㈱(現TOTO㈱)にて長年水まわり設備機器・福祉機器を中心としたバリアフリー化の研究・開発業務に従事し、2002年同社内に設立されたUD(ユニバーサルデザイン)研究所の初代所長に就任。現在は西日本工業大学で教鞭を執るほか、国際標準化「ISO」の日本代表委員等も務めている。