第21回防犯リフォームの極意
在宅の長い今こそ考える
泥棒を寄せ付けない対策とは?
(写真と資料/冒頭以外、旭化成ホームズ株式会社)
「わが家は大丈夫!」なんていう油断は禁物。
泥棒は根絶やしにできなくても、侵入されにくい家にすることは可能です。
2006年から現在まで、住宅侵入被害の調査と防犯設計の研究を続ける、
旭化成ホームズ株式会社「くらしノベーション研究所」の松本 吉彦さんと柏木 雄介さんに、
住宅における防犯の基本とリフォームのポイントを伺いました。
プロフィール
旭化成ホームズ 株式会社
くらしノベーション研究所顧問・二世帯住宅研究所所長
松本 吉彦さん英マンチェスター大学に留学中の1996年に、治安向上をテーマとした再開発を体験。帰国後、明治大学と共同でヘーベルハウスの侵入被害調査に取り組み、防犯仕様の企画や「ゾーンディフェンス」をはじめとする防犯環境設計の手法を提案してきた。警察大学校などでも防犯に関する講演を行う。一級建築士。
くらしノベーション研究所主任研究員
柏木 雄介さん旭化成ホームズ入社以来、施工管理に携わり、313棟のへーベルハウスを引き渡した。5人の子どもを育てながら、防犯環境設計、生活者研究に従事。近年は侵入被害の分析や顧客向けセミナーを担当する。一級建築士。
泥棒に狙われやすいのは
どんな家?
警察庁の調べによれば、住宅への侵入窃盗は2003年の約19万件をピークに減少傾向にあります。2020年は約2.1万件と、戦後最少を更新しました。けれども、くらしノベーション研究所の松本さんは「被害が減っている今こそ、対策を考えておくことが大事」と語ります。
「侵入の手段は変化します。残念ながら、犯罪を根絶することはできません。被害が多い時期は応急処置に追われてしまいがちですが、減っている時期には、減った要因を分析して、効果的な対策を知ることができるのです」。
「侵入窃盗対策の基本は、犯罪が起こりやすい“場所”をつくらないこと」と松本さんは言います。「たとえば酒気帯び運転のように、“人”が原因で起きる犯罪は、厳罰化によって減らすしかありません。一方で、住宅への侵入窃盗はいかに狙われる“場所”にしないかがポイント。犯罪が多い場所の特徴を調べ対策することで、泥棒に犯行の機会を与えず、安全に暮らすことができます」。
あなたの家は、泥棒に狙われやすい場所になっていませんか?以下、チェックポイントを見ていきましょう。
Check Point1
自宅の周りを見直す
まちの中であなたの家は“侵入しやすい家”になっていないでしょうか。近隣の家が塀やフェンスで囲われているのに、一軒だけオープンにしていると、犯罪者に目を付けられやすくなります。逆に、オープンな住宅地の中で、高いフェンスで囲われているような閉鎖的な家にも同様の傾向がみられます。そのほか、家のそばに電柱や塀、物置など、道路や隣家からの侵入ルートや足がかりになるものがないか、見直してみましょう。
Check Point2
家の弱点を把握
くらしノベーション研究所が防犯対策をスタートさせたころから始めた、侵入被害を受けた戸建て住宅の調査では、侵入箇所の9割以上が1階の窓に集中していました(下の図参照)。また、調査を始めてすぐに判明したのは、前面道路から見えにくい、敷地の裏側や側面の奥が狙われやすいことでした。
Check Point3
ちゃんと鍵をかけていますか?
警察庁の調べによれば、2019年に発覚した住宅対象窃盗2万8816件のうち、実に1万4015件が、そもそも窓などを「締めていない」ことによるものでした(参考:警察庁「令和元年の刑法犯に関する統計資料」2020年8月)。「たとえ面格子がある窓でも、ガラス戸を開けたまま出掛けるのは厳禁です。犯罪者に侵入する機会があると感じさせてしまいます。面格子は、“窓を突破される時間を稼ぎ、その間に誰かが発見して通報することを期待するもの”と捉えることが重要です」と松本さん。
泥棒に狙われない家に
するための、
基本的な考え方
Point1
近隣住民や通行人による
「みまもり」が犯罪を未然に防ぐ
防犯を考えるとき、私たちはまず、建物自体のガードを固めることを想像しがちです。しかし「近年、窃盗犯罪が減っている要因は、ハード面の防犯強化のおかげだけとは考えにくい」と松本さんは言います。「実際に、防犯ガラスなどの普及はあまり進んでいないのに、窃盗犯罪は減っています。その理由は、人々の防犯意識の高まりや見回り活動などにあるのではないかと考えられています」。
実際、都市防犯研究センターが実際に侵入窃盗で検挙された人にヒアリングした結果、63%が「近所の人に声を掛けられたりジロジロ見られたために犯行を諦めたことがある」と答えています(出典:都市防犯研究センター「JUSRIリポートNo.12」1997年)。
「住宅侵入犯罪への対策は、予防、抵抗、対処の3段階に分けられます。まず大事なのは、第一段階の予防。近所の人や通行人による自然なみまもりを促し、被害リスクの高い場所に入らせないようにします」(松本さん)
Point2
「みまもり」のない場所には
犯罪者を寄せ付けない
くらしノベーション研究所は、住まいの防犯の基本として「ゾーンディフェンス」を提唱しています。
前述のように、戸建て住宅の侵入被害は敷地の奥に集中しています。そこで敷地を、来客を受け入れる「アクセスゾーン」、道路から見える位置にはあるけれど、侵入を阻止したい「プライベートゾーン」、道路から死角に位置し、被害が起こりやすい「ケアゾーン」に分けて対策を打つ考え方です。次項では、くらしノベーション研究所主任研究員の柏木さんに、リフォームでもできる具体策を教えていただきます。
防犯リフォームのポイント
Point1
アクセスゾーンより
内側に入り込まれない外構
「アクセスゾーンとプライベートゾーンの境界線が曖昧だと、プライベートゾーンへ違和感なく侵入してしまうため、私たちは“ディフェンスライン”の設計を重視しています」と柏木さん。「道路からのみまもりがしっかり届くプライベートゾーンの手前にディフェンスラインを設定し、仕切りを設けて、奥に入ることに違和感を感じる状況をつくることが大事です」。
左の写真のように仕切りがないと、自然にプライベートゾーンやケアゾーンまで入り込まれてしまいますが、右の写真のように鍵付きの仕切り戸を付ければ入りにくくなります。たとえ乗り越えようとしても、傍から見て明らかに不審者だと分かるので、見つけた人が通報してくれる可能性が高まります。
Point2
格子の使い分けでみまもりと
プライバシーを両立する
防犯面では周囲のみまもりを期待したいけれど、プライベートゾーンが丸見えになってしまうのも困ります。防犯とプライバシーを両立させるために、効果的なのが適材適所の外構のフェンスの選択。家の中は見えないけれど、敷地に侵入して窓をこじ開けようとする犯人の姿は見える。その加減を確かめるために旭化成ホームズが明治大学と共同で行った実験では、「フェンスの透過率は50%あれば十分」という結果が出ました。
さらに、「縦格子と横格子の使い分けもポイントです」と柏木さん。
「縦格子は、見る角度によって透過率が変化します。正面からだと奥までよく見えますが、斜めからだと見えにくい。この特徴を利用して、みまもってもらいたい窓に直交させて設置します。そうすると、通行人が通るとき、窓の前に不審な人がいれば分かりますが、窓の中まで覗かれる心配はありません」。
一方、横格子は、どこから見ても透過率が変わりません。隣家との境など、道路に直交する向きに設置すると、敷地の奥まで見通しが確保できます。
Point3
プライベートゾーンは
光でみまもりを促す
夜間にプライベートゾーンに侵入された場合には、光や音でアラームを発して周囲に気付いてもらう必要があります。もっとも、柏木さんは「窓の防音性も向上しており、よほど静かな住宅街でないと音を使うのは難しいでしょう」と言います。「人感センサー付きの防犯照明が効果的です」。
このとき、間違いやすいのが照明を取り付ける向き。たまに、人感センサー付き照明を道路に向けて設置している例を見かけますが、これでは逆効果です。「侵入者を威嚇する意図だと思うのですが、外から見て敷地内が逆光になり、かえって道路から侵入者が見えにくくなってしまいます。大事なのは、近所の人に、怪しい人に気付いてもらうこと。敷地の奥にある開口部をしっかり照らすように設置し、侵入者の姿が見えるようにしましょう」。
Point4
ケアゾーンまで侵入されたら、
発見されるまで抵抗できるかが鍵
道路から死角になる「ケアゾーン」まで忍び込まれてしまったら、「いかに粘って時間をかせぎ、その間に通報してもらうかがポイントになります」と柏木さん。警察庁が設置した官民合同会議による「防犯性能の高い建物部品(CP部品)」の性能基準は「侵入までに5分以上の時間を要する」こと、となっています。開口部をこじ開けたり壊したりするまでに時間がかかると、その間に発見されて泥棒が侵入を諦めることが期待されるからです。
「玄関ドアにはダブルロック、窓には防犯ガラス、シャッターや面格子が有効です」と柏木さん。開口部の位置そのものを変える場合には、窓の高さも検討項目です。「掃き出し窓に比べて、腰高より高い位置にある窓は被害が少なくなります」。
Point5
鍵かけや点灯の習慣化、
自動化をサポートする設備
玄関ドアがダブルロックになっているのに、片方しか締める習慣がなかったり、せっかくシャッターを付けていても、開けっぱなしでは意味がありません。家族が防犯意識を持つことはもちろん、あらかじめ施錠や開閉の手間が省けるようにしておけば、戸締まりの確実性が高まります。
「玄関ドアでは、ボタンやカードでダブルロックを同時に操作できるものが出ています。また、手動のシャッターは開け閉めが億劫になりがちです。手間を省くために、リモコンやタイマーで開閉できる電動シャッターを検討するといいでしょう。リフォームで後付けできる商品もあります」(柏木さん)。
夜も留守にする際は、シャッターを閉めておくだけでなく、下図のように、家の中から灯りが漏れるようにしておくと効果的。「いかに在宅しているように見せるかが大事です」と柏木さん。よく家族で旅行に出掛けたりする家庭では、照明を自動化する方法もあります。「夜も灯りが点かない日が続くと、空き巣に目を付けられかねません。タイマーを設定して、留守中も夜間に点灯するようにするのがおすすめです」。
インターホンには録画機能があると、犯罪者に狙われている兆候をつかめる場合があります。近年のインターホンは広角レンズで死角がほとんどないため、犯罪者はカメラを隠して押し、留守確認をすることがあります。隠してしまえば写りませんが、「それでも、レンズが侵入者の手で隠されて画面が真っ黒になった画像があったら、犯罪者の留守確認ではと考えて、より一層の注意を払うことが重要です」と柏木さん。
最後に、防犯の基本中の基本として身に付けておきたい習慣を一つ。「鍵の頭の部分に刻まれている番号を、絶対に人に見られないようにしましょう。鍵番号を知られると、その情報だけでも合鍵をつくられてしまうからです」。
生活者の行動パターンや不審者の心理、住宅や敷地の形状などの要素を引き合わせながら、プランを練る防犯リフォーム。TDYのコラボレーションショールームで、TOTOの水まわり、DAIKENの内装建材、YKK APの窓・玄関ドア・エクステリアなどの商品を実際にご覧いただくことで、実感を持ってプランを考えることができるはず。ぜひ、ショールームにご来場ください。
防犯配慮商品のご紹介
家の防犯対策におすすめの商品です。
※本商品は、防犯性の向上を考えたものです。犯罪行為による被害の補償は致しかねます。
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YKK AP 防災安全複層ガラス
ガラスの間に強度と柔軟性に優れた樹脂中間膜を挟み込んだ、破壊されにくい防犯タイプの複層ガラス。強風時の飛来物対策にも有効です。
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YKK AP 戸締り安心システム
ミモット窓に設置されたクレセントセンサーや、玄関ドアのスマートコントロールキーが鍵の締め忘れを察知し、スマートフォンにお知らせします。
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YKK AP マドリモ
シャッター・雨戸シャッターや雨戸を壁の上から取付けて、簡単にリフォーム完了。リモコンシャッターなら、シャッターが完全に閉じると自動的にモーターロックがかかります。
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YKK AP ドアリモ
玄関ドア D301つのキーでドアの2箇所を施解錠する1キ-2ロックを採用。さらに不正解錠や破壊を防ぐ機能を複数備えた玄関ドアです。
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YKK AP 高強度面格子
FLAワンウェイねじやブラケットカバーなど、防犯性に配慮した工夫を施したアルミ製面格子。後付ブラケットタイプで、どんな窓にも取付けできます。
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YKK AP ルシアス
スクリーンフェンス外からの視線をカットし、屋内の空間を快適にする高尺目隠しフェンスです。風は通し視線をカットするデザインも取り揃えています。
※この記事内容は、2021年2月26日時点での情報です。ご了承ください。
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