第17回断熱リフォームで
次の世代まで快適に。
愛するわが家を性能アップ!
自分が生まれ育った実家を住み継ぎたい。長年暮らして愛着あるわが家を快適なものにしたい。
こうしたリフォームのニーズに2013年から対応してきたのが
エコ住宅リフォーム・リノベーションを手掛けるエコワークス株式会社の社長、小山 貴史(おやま たかし)さんです。
断熱性を改善させて家の快適性、耐久性を高める断熱リフォームについて、そのメリットや注意点などをお聞きしました。
エコワークス株式会社
代表取締役社長 小山 貴史さん1964年、熊本県生まれ。1987年、京都大学工学部卒業。2004年にエコワークス(福岡県)を創業し、福岡・熊本・佐賀を中心にした九州エリアでエコハウスの普及事業を展開。環境と省エネをテーマに活動しており、2012年には地球温暖化防止活動で環境大臣表彰受賞。
https://www.eco-works.jp/
「断熱リフォーム」の基本
小山さんはエコワークスの社長として、新築やリフォームを通して高断熱・省エネの住宅の普及に携わる一方、経済産業省や住宅団体などの委員会にも所属して、住宅関連の環境問題にも取り組んでいます。
小山さんの考える断熱リフォームとは?
「ある水準以上の断熱性を建物に持たせることで、住まい手に健康と快適性をもたらすリフォームのことだと考えています」。住宅や建築物の断熱性や省エネ性の基準には、1980年に制定された省エネルギー基準があります。1992年、1999年に改正され、建物の断熱性能は順次強化されてきました。
2013年の改正では、断熱性能の評価に加え、設備や建物全体の省エネ性を評価する「一次エネルギー消費量基準」が新たに導入され、さらに2016年には建築物省エネ法が制定されました。そのおかげで近年の新築住宅の断熱・気密・省エネの性能は徐々に高まってきています。
その一方、築年数を経た既存住宅の多くは、現行(2016年制定)の断熱基準を満たしていません。こうした住宅での断熱リフォームの基本は、床下・壁・天井(屋根)に必要な量の断熱材を入れて家全体をくるみ、室内外の熱が出入りする開口部を高断熱の窓やドアなどに取り替えて、外気の影響を受けにくくすること。また、熱の逃げ道ができないように、断熱する層を連続させることが大切です。
「当社で断熱リフォームをするときは必ず気密工事も行います。施工後には気密検査も実施して一定水準をクリアしているかどうかも確認。当社では、常にそのくらい高精度の施工を心がけています」
断熱リフォームに取り入れる商品の例
断熱リフォームでは、窓などの開口部や水まわりなどそれぞれの部分の断熱が必要です。また屋外の新鮮な空気を適温に調整して室内に取り込む、熱交換型換気扇も重要。ここではそれぞれの商品の一例をご紹介します。
窓
水まわり
換気
予算と施工範囲によって
断熱リフォームは
主に3種類の方法があります
断熱リフォームには、大きく分けて「開口部のみの断熱」「ゾーン断熱」「全断熱」の3種類ある、と小山さんは考えています。それぞれどんな特徴があるのか、解説してもらいました。
もっとも簡便な
「開口部のみの断熱」
既存住宅を断熱する場合、もっとも簡便なのが、熱の逃げ道となる窓や玄関ドアを断熱性の高い製品に交換するリフォームです。既設の窓はそのままにして、室内側に断熱性の高い内窓や内部に空気層を設け熱の出入りを防ぐスクリーンなどを取り付けるという選択肢もあります。「コストパフォーマンスの面では、開口部である窓のグレードを上げるのがもっとも効果的です」と小山さん。
生活の場だけを快適にする
「ゾーン断熱」
2つ目は、LDKのみ、1階のみ、といった具合に部分的に断熱層で暮らしの場を囲い込む「ゾーン断熱」と小山さんが呼んでいる方法。小山さんが自社の断熱リフォームでもっとも多く採用しているスタイルです。「当社で断熱リフォームに本格的に取り組んだ2013年以降、約7割がゾーン断熱です。とくに1~2人世帯の場合、ふだん生活するリビングまわりに寝室や浴室をまとめて、そのゾーンだけ断熱化すれば快適に暮らせるというケースが多いのです。家全体を断熱化するより安価にすむというメリットがあります」。
満足度がいちばん高い
「全断熱」
3つ目は、屋根・壁・床など建物全体に断熱・気密施工を施す「全断熱」。建築費はかかりますが、熱の逃げる隙間が生じにくく、もっとも断熱性能を向上させやすくなります。「家の中に温度差が生じにくく、どの部屋にいても快適なので、3種類の断熱リフォームの中でお客様の満足度はいちばん高いですね。ゾーン断熱を選んだお客様からも引き渡し後に"こんなに快適になるなら、家全体でやっておけばよかった"という声をよくお聞きします」。
同社の施工実績では、ZEH基準※の全断熱リフォームの平均工事費用は、施工範囲が家全体にわたるため、ゾーン断熱より422万円程度増えるとか。長らく快適に住み続けるため、この金額差をどのように判断するかが重要なカギになりそうです。そこで、次の章では断熱リフォームのメリットについて小山さんにうかがいます。※断熱性、省エネ性を高めることで、家庭で消費するエネルギーを、太陽光発電などの創エネ設備の発電量以下に抑える住宅を「ゼロ・エネルギー・ハウス」(ZEH)と呼ぶ。その際に建物に求められる性能を「ZEH基準」という。
断熱リフォームのメリットは
健康維持、光熱費削減、耐久性の向上
夏涼しく冬暖かく健康的に過ごせるようになる断熱リフォーム。でも効果はそれだけではありません。冷暖房の効率がよくなることで光熱費削減につながります。また、壁内部の結露の発生を抑えられるので構造材が傷みにくく、家の耐久性が高まるというメリットも見逃せません。
室内の温度差をなくして
心身の負担を軽減
断熱リフォームによって得られるメリットの一つ目は、健康的に暮らせるようになること。「外気の影響を受けにくくすることで、夏は日射の熱気による室温上昇が抑えられ、冬は冷気による底冷えなどもなくなります。最小限のエアコンで効率よく冷暖房でき、ヒートショックの恐れのない、安定した温熱環境が実現します」(小山さん)。
ちなみに、WHO(世界保健機関)は2018年11月、冬の住宅の最低室内温度として「18度以上」を強く勧告。建築と都市の持続可能性工学を研究している慶應義塾大学理工学部教授 伊香賀 俊治さんも、室内の温度差を小さくすることで血圧上昇の抑制につながるなど、室温と健康の関係に明確な関係があることを発表しています。エコワークスのYouTubeチャンネル「未来基準の高性能住宅」では、伊香賀さんをはじめとする有識者へのインタビュー動画を通じて、断熱・省エネ性能を高める意義やメリットについて情報発信しています。
快適かつ冷暖房の効率を改善して
省エネを実現
家の断熱性が向上すれば、外気の熱の出入りが少なくなり、冷暖房設備に依存し過ぎず快適な室温を保ちやすくなります。国土交通省の資料によれば、昭和55年以前に多く建てられた無断熱住宅と比べ、2016年省エネ基準で断熱した住宅では、冷暖房にかかるエネルギー消費量が約60%削減できることがわかりました。
「当社のモデルハウスの仕様で試算すると、断熱リフォーム前に33.7万円かかっていた年間光熱費を、改修後は約15.3万円までコストダウンすることが可能で、約55%の削減となります。当社の施工実例でも、リフォーム前は石油ストーブやこたつ、ホットカーペットなども使用していた家庭が、エアコン1台だけで冷暖房をまかなえるようになることが多いですね」(小山さん)
結露の発生を抑えて
構造材のカビや腐朽などを防ぐ
断熱性の低い住宅の場合、室内の暖気が冷たい壁面に当たって急に温度が下がり、空気中の水蒸気が結露することがあります。これが繰り返されると壁面や壁の内部の構造材が湿気を帯びるようになり、カビが生えたり木部が腐ったり、シロアリの被害を招いてしまうことも。しかし断熱リフォームを実施すると、室温と壁の温度差が生じにくくなるため、結露の発生を抑えることができます。「断熱施工とともに、隙間を防ぐ気密工事もきっちり行うことが大事。構造材の耐久性が損なわれず、家が長持ちします」。
プロがおすすめする
"進化系"の
断熱リフォーム仕様
より快適で長持ちする断熱リフォームを実現するためには、一定水準以上の性能を持たせることが大切。プロがおすすめする最先端の"進化系"断熱リフォーム仕様をご紹介します。
小山さんが自社で断熱リフォームをする場合、基本的な家の性能の目標としているのが、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の仕様です。その中でも特に断熱性能については「ZEH(ゼッチ)」相当の性能を基本仕様としています。
「当社では新築住宅でも長期優良住宅、ZEHを標準提案としており、断熱リフォームでも現在のさまざまな性能基準の中で最高レベルの仕様を提案しています。せっかくお金をかけるのですから、次の世代にまで住み継げるレベルにまで性能を高めるリフォームをご提供したいと考えています」。
長期優良住宅化
リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、次に挙げるリフォームについて、国が費用の一部を助成するものです。省エネルギー対策、劣化対策、耐震性、維持管理容易性などの項目の要件を満たすことが求められます。
- 性能向上リフォーム工事などに要する費用
- 子育て世帯向け改修工事に要する費用
- インスペクション、履歴作成、維持保全計画作成などに要する費用
「こうした次世代に向けた長期的な視野で計画すると、一般的なリフォームよりは建築費が高くなります。しかし、その後も長期にわたって住み継げれば、建て替えるよりも割安になるはずです」。性能を向上させることで、思い入れのあるわが家の寿命を延ばすことにもつながるわけです。
ZEH(ゼッチ)
「ZEH」とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称でゼッチと読みます。建物の断熱性を高めて、家庭で使われる1年間のエネルギーより、搭載した太陽光発電システムなどによって創るエネルギーの方が多くなる、または、エネルギーの差がゼロになる住宅のことをいいます。家をZEHにリフォームする場合、環境省が行う「ZEH支援事業」の補助金と、経済産業省が行う「ZEH+実証事業」などの補助金が利用できます。
ハイレベルな断熱リフォームを実現するには、リフォーム会社に設計・施工の両面で豊富な経験と確かな見識、高い技術力が必要です。「断熱リフォームを相談するときには、長期優良住宅やZEHを標準的に採用している会社を選ぶことをおすすめします。日常的にこれが当たり前だと思って取り組んでいる会社であれば、設計担当者も現場に携わる大工、職人もみんな"当たり前"としてしっかり施工してくれるはずですから。断熱のプロの会社に依頼しましょう」。
菅義偉総理の初めての所信表明演説では「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」旨が示されました。断熱リフォームがさらに普及していけば、エコワークスの"当たり前"が、住宅業界の"当たり前"になっていくのかもしれません。TDYのコラボレーションショールームでは、TOTOの水まわり、DAIKENの内装建材、YKK APの窓・玄関ドアなど、3社における住まいの断熱性、省エネ性向上に貢献する製品をご覧いただけます。ぜひご活用ください。
断熱性能を高める
リフォーム商品のご紹介
住まいの断熱性を高め、省エネにつながるおすすめの商品です。
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TOTO 戸建住宅向けシステムバスルーム
サザナ掃除のしやすさ・収納の便利さなど、おふろを使う人、お手入れする人、みんなにとっての「しあわせ性能」を追求したバスルームです。
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DAIKEN 熱交換型換気扇
DKファンNK熱交換器が冷暖房の熱ロスを大幅に削減し、省エネに貢献する換気扇です。また、熱交換器のもつ遮音機能で、音の侵入や音漏れを低減。寝室や勉強部屋にも最適です。
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YKK AP かんたんマドリモ
断熱窓暑さ寒さの原因となっていた古い窓を最新の窓へスピード交換。1窓約半日で住まいの断熱性をアップできます。
-
YKK AP かんたんマドリモ
内窓 プラマードUいまある窓の内側に新しい窓を取付けて二重窓に。1窓約60分の簡単施工で断熱性・気密性が高まります。
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YKK AP かんたんドアリモ
玄関ドア D301日でかんたんに交換できる玄関ドアのリフォームで、外気の侵入を抑える断熱ドアに変わります。
※この記事内容は、2020年11月27日時点での情報です。ご了承ください。
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