達人が聞く、リフォーム成功のコツ! Y様邸 第1回:家の記憶編

暮らしやすさと昔の面影をどちらも感じられる家が理想でした。

家族の思い出を大切に残しながら、より快適な暮らしを目指せるのが、リフォームの醍醐味。Y様邸では、キッチンと寝室の位置を入れ替える大胆なリフォームによって、理想の住まいを実現しました。無垢の床板や格天井など、家のあちこちに暮らしの記憶が埋め込まれているのもユニークなところ。第1回目は、リフォームによって日常生活がどう変わったかを伺いました。

プロフィール

リフォームした人

Y様(埼玉県)

12年前、埼玉県越谷市に中古物件を購入。寒さや揺れなどの不便を解消するため、2015年にリフォームを実施。骨董市へ行くのが夫婦共通の趣味であり、家のあちこちにこだわりの骨董品が顔をのぞかせる。

お話を伺った人

江口恵津子氏(株式会社ヴェルディッシモ)

建築デザイナー、インテリアコーディネーター。専業主婦を経てリフォームの世界に入る。「大改造!!劇的ビフォーアフター」(テレビ朝日)など出演多数。著書に『わが家のスローリード・リフォーム』(PHP)がある。

リフォーム情報

家族構成
夫+妻
面積
122m²
⇒122m²
形態
戸建住宅
日数
75日
築年数
30年
費用
1,970万円
採用商品
TOTO:トイレ「ネオレスト」/浴室「サザナ」/手洗い器キャビネット/棚付二連紙巻器
YKK AP:窓・窓まわり「フレミングJ」 「プライバシースクリーン」 「プラマードU」/玄関引戸「冴Ⅱ」
担当店
有限会社 一・番家工務店

Before

After

家のいい表情を引き出した、「東西大転換」の発想

リフォームされるまでの経緯をお聞かせください。

ご主人 12年前にこの家を中古で買い、10年住んだところでリフォームすることに決めました。

江口氏 もともとはどんな家だったのですか?

ご主人 新潟の宮大工の方が建てた、純和風の家でした。夏は過ごしやすいのですが、冬はものすごく寒かったのです。

奥様 国道が近くなので揺れも大きくて…。騒音もすごかったですね。

ご主人 これまでもキッチンやお風呂など水まわりのリフォームを何度か行いましたが、大がかりなリフォームは今回が初めてでした。

工務店探しでは、何を重視しましたか?

ご主人 地元の工務店であることを重視しました。

江口氏 何かあったらすぐ来てくれると思うと心強いですよね。施工をお願いした工務店さんとはどのように出会ったのでしょう?

ご主人 TOTOのショールームのイベントに出かけたときに、担当者から「リフォーム事例のコンテストでよく受賞している工務店があるので、行ってみては」と紹介してもらいました。

どのような条件でプランニングをお願いしましたか。

ご主人 暖かくて快適な寝室が欲しいということと、元の家の古材を使ってほしいということの2点ですね。

江口氏 今回のリフォームは、西側にあったキッチンとリビングを東へ、元は客間だった東側の寝室を西へという大胆な発想により生まれました。東西大転換のプランを提案されたときはどう思いましたか?

奥様 依頼時に、自分たちで書いた図面を渡したのです。ところがそれを根底から覆すプランが出てきて、「まさか!」と驚きました。

江口氏 施主様はどなたも、自分の家のことは自分が一番よく知っていると思っています。でも、その思い込みが足かせになることもあります。「対面キッチンにしたいから、この間取りのまま向きだけ変えよう」というように、小さい視野から抜け出せないことが多いのです。

奥様 私たちもまったく同じでしたね。さらに工務店さんは、「寝室とトイレは近い方がいい」とか「浴室と寝室を隣り合わせにすれば、すぐに着替えられてラク」といった提案を積極的にしてくださって。女性ならではの細やかな目線がうれしかったです。

江口氏 以前は西側のキッチンが孤立していましたし、寝室と水まわりの生活動線も少し不便だったと思います。それを東側は家族が集う場、西側は家族が休息する場というふうにガラッと転換することで、この家の魅力をあますところなく活かせるようになりましたね。

家族が集うリビングは、猫も悠々と歩ける気持ちのいい広さ

かつてキッチンとリビングがあった西側は、寝室へとリフォーム

安全性と居心地の良さを両立させるテクノロジー

江口氏 今回のリフォームではリビングの天井を抜いて梁を見せるようにしましたが、そうすると照明を付けるのが難しいのです。でも、LEDのダウンライトを使ってきれいに仕上げていますね。あとは、この大空間を暖かく保つために、床暖房を入れたのもいいと思います。

奥様 畳の間にも床暖房が入っています。そのおかげでキッチンも暖かいのです。

以前の寒かったという不満がすっかり解消されましたね。

ご主人 それに加え断熱材を入れてくださったおかげで、騒音も遮られるようになりました。

奥様 しかもこんなに暖かくなったのに、電気代・ガス代・水道代が以前より安くなったのです。

江口氏 それもリフォームの良さですよね。最先端の技術を取り入れることで、暮らしやすさが格段にアップします。

ご主人 このストーブは、デザイナーさんに勧めてもらいました。外観は薪ストーブですが熱源はガス。赤く光って火が点いたように見えるのですよ。

江口氏 揺らめく炎は、「1/Fゆらぎ」という自然界のリズムを表しているのですって。心からリラックスできますよね。

家の揺れはどの程度緩和されましたか?

ご主人 車通りが多い日中は震度2くらいの揺れを感じていましたが、ほとんど感じなくなりました。

江口氏 このリビング、オープンで広々としていますが、要所要所に補強の壁や揺れ止めを用いて耐震性を上げていますね。以前の間取り図を見ると窓に囲まれていて、壁が少ない状態でした。梁を見せて美しい意匠に仕上げると同時に、構造の強化も忘れず、それを両立させたのはさすがです。

ご主人 太い柱はあえて残しました。わが家の大黒柱ですからね。

江口氏 これ、変えなくて良かったですよ。柱に開いたこの穴も、味があっていいですね。いつかまたリフォームするとしても、これだけはずっと残していけたら素敵ですね。

薪ストーブの形をしたガスストーブ。アンティークとも相性抜群

天井を抜いて梁を見せた。補強が施され、家全体の安全性もアップ

ワンポイントアドバイス

「暮らしのイメージが膨らむ家」

昔の家は「ハレ」と「ケ」を意識して、お客様がいらっしゃる部屋は晴れやかな位置に、生活空間は人目につかない隅っこに、というふうに使い分けていました。そうした造りの家を今の暮らしに合わせて変えていくのが、リフォームの醍醐味です。そういった意味で、Y様邸はやっぱり東西転換のプランが正解だったと思います。これは私の持論ですが、空間は波長です。色や光や人間関係の波長がすべてピッタリ合うと、居心地がいいと感じられます。波長のいい家にいると気持ちがいいですし、暮らしのイメージもどんどん湧いてくるようになるのですよね。

フラットで回遊できる、孫が思い切り遊べる家

江口氏 これだけ広いと、お孫さんが遊びに来たときも楽しいでしょうね。

奥様 フラットで走り回れるので、運動場みたいになっちゃうのです。

江口氏 このお家の素晴らしいところは、回遊動線がたくさんあること。動線が一方通行だとストレスが溜まりますが、リビングと収納部屋と寝室をつなぐ廊下を一本通したことで、自由自在に回遊できるようになりました。止まるところがなくてストレスフリーだから、とっても過ごしやすいのです。

居心地の良さのヒミツは他にも何かありますか?

江口氏 収納部屋に古いピアノを置くスペースを作ったり、かつて使われていた欄間を再利用したり、懐かしさと新しさを見事に同居させています。元の家の面影を残しながらリフォームするには高度な技が求められますが、それをするからこそ“世界でただ一つの自分の家”ができあがるのです。

ご主人 実際にかかった費用を考えれば、新築も可能でしたが……。

江口氏 家も喜んでいると思いますよ。この家を建てた方の思いもちゃんと引き継いでいるので。

奥様 そうですね。旅行に出かけても、家の方が快適だから早く帰りたくなってしまうのです(笑)。

天井が高い家の快適さは、「旅から早く帰りたくなる」ほど

暖炉の後ろの壁は、かつて床の間に使われていた木材を再利用

せっかくのリフォームだから、細かいところにも妥協しない

当初の予算はどのくらいでしたか?

ご主人 1,500万円くらいを予定していました。工務店さんから提示された見積もりは予算をかなりオーバーしていましたが、思い切ってお願いして良かったです。

江口氏 予算オーバーにイエスというのは勇気が要ると思いますが、その一歩をよく越えられましたね。

ご主人 やっぱり、東西逆転の設計が決め手でしたね。

奥様 私にとっては、女性のデザイナーさんというのが一番の魅力でした。「この方だったらきっと居心地のいい空間を作ってくださるはず」と確信できたのです。

リフォームを考えている人に向けて、アドバイスがあればお聞かせください。

ご主人 うちの場合は、イベントの担当者が工務店さんとの出会いを作ってくれました。ですから、出会いや情報を求めてこまめにショールームやイベントに足を運ぶことをお勧めしますね。

奥様 お金に関して、出すべきところはきちんと出して、老後に残さないようにする(笑)。それは冗談ですが、肝心なところで出し惜しみをしなければ間違いないと思います。

江口氏 今回のリフォームでは、家全体を大きくとらえて大胆な設計を試みながら、小さな明かり取りやセンサーライトを設けるなど、ディテールにもきちんとこだわっています。暮らしにくい要素が少しでもあると、無意識のうちにストレスは溜まっていくもの。反対に、家の隅々まで工夫が行き届いていると、こんなにも気持ちのいい空間ができるのです。みなさんもぜひ細かいところにも妥協せず、リフォームで暮らしやすさをとことん追求していただきたいですね。

床の間だった場所に窓を設けた。風の通りが良くなり明るい印象に

さりげなく古材が使われているところに、工務店の気遣いが見える

ワンポイントアドバイス

「制度を使って賢いリフォームを」

Y様は、住宅エコポイントの他は助成など一切使わずに自己資金でリフォームを行ったそうですが、地区によっては構造補強に助成が下りる場合もあります。自治体や国の助成をうまく使えば、数十万、数百万単位で予算をカバーできることも。それによって、ワンランク上のリフォームが叶うこともあるので、使わない手はありませんよね。住んでいるエリアによって差がありますので、リフォームする前に調べたり問い合わせをしたりしてみましょう。

担当店:有限会社 一・番家工務店

次回は、浴室やトイレなど設備面のお話を中心にお届けします。どうぞお楽しみに。